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徳島発の“ジャパンブルー”を世界へ発信!

ニッポンを元気に!情熱人列伝

徳島大学大学院社会産業理工学研究部生物資源産業学域教授/徳島大学産業院教授 宇都 義浩さん

古くから藍染めとして親しまれている「藍色」は、ジャパンブルーとして日本を象徴する色の1つとなっています。藍の新しい活用法に取り組んでいるのが、阿波藍の名産地として知られる徳島県。「県の宝である阿波藍の魅力を世界に発信したい」と語る徳島大学の宇都義浩教授は、創薬研究の技術を生かした新しい藍文化の創造に挑んでいます。

阿波藍から作られる美しい藍色の染料は「ジャパンブルー」と呼ばれて世界中で注目

[うと・よしひろ]——1970年、宮崎県生まれ。1997年、九州工業大学大学院情報工学研究科博士課程修了。情報工学博士。日本学術振興会特別研究員、徳島大学工学部助手・助教授を経て、2014年から教授。専門は創薬化学で、現在は主にがんの創薬研究に従事。徳島大学産業院の教授も務める。

全国の都道府県には、花や木、鳥など、自治体の風土を象徴するシンボルがあり、県旗のデザインなどにあしらわれています。「県の色」も、県ならではの特徴を示すアイコンの一つです。徳島大学大学院の宇都義浩教授は、徳島県の色として条例で制定されている「藍色」にまつわる新しい技術を開発し、地域振興につなげています。「ジャパンブルーと呼ばれる阿波藍の魅力を世界に発信したい」と意気込む宇都教授にお話を伺いました。

「染料になじみがない方でも、藍染めという言葉は聞いたことがあると思います。徳島県では、阿波藩と呼ばれていた江戸時代から藍染めが広く行われ、いまでも徳島県の藍は全国的に知られています」

宇都教授が語る「阿波藍」とは、徳島産の藍の葉を発酵させて作る染料のこと。「すくも」と呼ばれる藍から作られる染料は、徳島県が生産量の全国第1位となっています。

「日本における藍染めの歴史はとても古く、飛鳥~奈良時代にさかのぼります。当時はとても貴重だった藍染めは、高貴な人の衣装に使われ、庶民には手の届かない存在でした。江戸時代に阿波藩で藍の栽培が盛んになってから、庶民が身につける衣の染料として使われるようになったんです。日本の藍色が世界的に知られたのは、明治初期。鎖国の時代が終わり、世界中から来日した外国人たちが、美しい藍色の衣服を身につける日本人の姿に魅了されたのがはじまりといわれています」

長い歴史がある藍染めの手法は、当時とほとんど変わらないといわれています。染師と呼ばれる職人さんが、江戸時代から続く伝統的な技法で染め上げる藍染めは“ジャパンブルー”として世界中の人を魅了しつづけているのです。

ところが、宇都教授によると、徳島県が世界に誇る一大ブランドの阿波藍は、近年になって大きな転換期を迎えているといいます。

「徳島県内で阿波藍を生産する農家の減少が続き、後継者問題が深刻となっています。さらに、海外産の藍が低価格で手に入ったり、化学染料の技術の発達によって人工的に藍色が作れるようになったりしたことも、阿波藍の文化が衰退している理由の一つです」

徳島市内の老舗店から「藍色をした和菓子」の創作依頼を受けて着色料の開発に着手

宇都教授たちが中心となって取り組んでいる阿波藍の新しい産業が生まれたのは、徳島市内の老舗和菓子店から、ある依頼をされたことがきっかけだったといいます。

「2017年の1月に和菓子店の経営者の方から『徳島県の名物になるような藍色の和菓子を作りたい』という相談を受けたんです。その経営者の方いわく、合成着色料を使った色でなく、徳島県の阿波藍にしか出せない美しい藍色を和菓子で表現したいとのことでした」

阿波藍を衣服の染料でなく、お菓子の着色料として活用するアイデアに共感した宇都教授は、同時に大きな可能性を感じたと振り返ります。

「染料のみならず、食品の着色料としての需要が作られれば、徳島県内の藍畑面積の増加が見込めると思いました。食品を製造・販売する2次産業の振興にもつながります。当時は2020年・東京オリンピックの公式エンブレムカラーとしてジャパンブルーが採用されたこともあって、阿波藍カラーの和菓子を世界に発信する理想的なタイミングだと思いました」

国内における食品着色料の市場は約500億円。青色の天然着色料としてスピルリナとクチナシの色素が普及しているものの、藍色の天然着色料は存在しません。そこで宇都教授は、阿波藍に含まれるインジゴ色素から天然着色料を作るプロジェクトに着手したのです。

創薬技術を応用して水に溶ける藍の粉末化に成功!和・洋菓子やワインの試作品も大好評

藍に含まれるインジゴ色素は水に溶けないため、藍を染料として使うときは、発酵させてから用います。染色後のインジゴ色素は水に溶けない状態で繊維に定着します。

水洗いをしても色落ちしない藍は染料として優れた性質を持つものの、食品用の天然着色料として活用するには「水に溶けない」ことが逆に高い壁となりました。食品に色をつける着色料は、製造工程において水溶性であることが欠かせないからです。

「水に溶ける藍の色素」という、藍の特徴を知っている人なら誰もが難しいと感じる高い壁を乗り越えられた背景には、宇都教授が携わっている創薬研究の技術がありました。

「水溶性の藍色素を開発するにあたり、私の専門である創薬研究の技術が役立ちました。開発イメージを想像したとき、頭の中で、ある抗がん剤の製造方法が応用できると思ったんです。具体的にはまず、阿波藍から単離したインジゴ色素に炭水化物の一種であるデキストリンを加えて微粒化します。そして、インジゴ色素に含まれる不溶性の物質を除去した後、乾燥させることで、水溶性の藍色素を完成させることができました」

宇都教授は、藍から水溶性の藍粉末の開発に成功した

宇都教授は、完成させた水溶性の藍色素の安全性を動物実験で確かめた後、2018年3月に特許を出願。構想・研究・完成から特許出願まで、わずか1年2ヵ月の早さでした。

「その後は、完成した水溶性の藍粉末の商品化を支援する目的で、株式会社藍屋久兵衛という徳島大学ベンチャー企業を設立し、代表に就任しました。水溶性の藍粉末に興味を持ってくださる多くの企業さんが、県内をはじめ、県外からも来られています」

宇都教授のもとでは、水溶性の藍粉末を開発するきっかけとなった和菓子をはじめ、ラスクやマカロンといった洋菓子、スパークリングワイン、備蓄用のパンなど、美しい藍色の試作品が続々と作られています。試作品の中には、藍色の煎茶といった、これまでの食品イメージを大きくくつがえすものもあるそうです。

和菓子
お茶
マカロン

「試作品を見たほとんどの方は、その瞬間に驚きの声を上げられますが、将来的には藍色の食品が生活の中で当たり前の存在になることを目指しています。先人たちによって受け継がれた藍染めの文化を守りながら、水溶性の藍粉末という新しい藍文化の普及に努めていきます」