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異変を感じたら透析日を待たずに行動することが大切です

患者さんインタビュー

NPO法人東京腎臓病協議会事務局長 板橋 俊司さん

東腎協は不安を抱える透析患者どうしが話し合う機会を作る橋渡しの存在です

[いたばし・しゅうじ]——1950年、東京都生まれ。小児期に慢性腎臓病を発症。30歳で慢性糸球体腎炎と判明。40代半ばから腎性痛風の発作や尿毒症の症状が出るようになり、55歳で血液透析を導入。通院先のクリニックで腎臓病患者会「腎友会」を発足し、2012年にNPO法人東京腎臓病協議会の理事に就任。以後、同協議会広報委員長などを経て、2015年10月より現職。

私は、2015年10月から、NPO法人東京(じん)(ぞう)(びょう)協議会(以下、(とう)(じん)(きょう)と略す)の事務局長を務めています。私が慢性腎臓病(CKD)と診断されたのは、10歳のときで10ヵ月ほど入院しまでした。といっても、当時は特に日常生活に困ることはなく、たまに健康診断で「たんぱく尿が出ています」と医師からいわれ、いつも意識はしていましたが特に節制をしない生活を送っていました。

30歳のときに受けた腎生検で(まん)(せい)()(きゅう)(たい)(じん)(えん)と診断され、あらためて危機感を持つようになりました。慢性糸球体腎炎は、糸球体という血液をろ過する腎組織が少しずつ機能低下を起こし、腎不全を起こしてしまう進行性の病気です。

慢性糸球体腎炎と診断を受けても、当時は自分が将来(じん)(こう)(とう)(せき)を受けて生きていくというイメージはまったく持っていませんでした。

具体的な症状に苦しめられるようになったのは、40代半ばを過ぎてからです。腎性痛風の発作や尿毒症による(けん)(たい)(かん)など、はっきりとした症状が起こるようになり、ついに55歳のときから血液透析を受けるようになりました。

血液透析の開始に伴って、経営していた会社を譲渡するなど、身辺の整理を進めました。透析に関する知識を何も持っていなかったときは、透析を受けると寝たきりの生活になると誤解していましたから、その後も細々と仕事を続けながら東腎協の役員として今日を迎えられているのはうれしい誤算です。

東腎協の主な仕事は、透析患者さんや腎臓病患者さんの医療環境を守ること、慢性腎臓病の啓蒙活動などの社会貢献活動や、都内の各地で催される集会やイベントを企画することです。ふだん私は都内の事務所に常駐し、会員さんや一般患者さんの電話相談の対応などもしています。

私たち患者会の役割は、透析患者どうしの情報交換やコミュニケーションができる機会を創出し、適切な情報共有をすることです。透析患者は皆、自分の体や将来に対して強い不安を抱えていますが、透析施設内で患者どうしが話す機会を持つことはなかなかできません。私たち患者会は、透析患者同士が話す機会を作る橋渡しの存在なのです。

例えば、透析患者が日常生活で悩まされる倦怠感にしても、正確に定量化できるものではなく、透析患者にしか分からない尺度があります。同じ境遇の人から、「そのくらいの疲れなら大丈夫だよ」といってもらえるだけで、透析患者は安心できるのです。

食事に関しても、「どのような透析食をとればいいのですか?」という透析患者からの相談の電話が、東腎協には頻繁にかかってきます。医師や栄養士さんは制限を求める立場上、安易なことはいえません。透析治療を受けている先輩患者や我々患者会が「あまり気にしすぎず、しっかり食べ、しっかり薬を飲んで適度な運動をしてください」とアドバイスすると、皆さんとても安心されます。

もちろん、食べすぎは問題です。でも、私たち透析患者は定期的に血液検査を受けていますから、異常が見つかればその場で医師の判断を仰ぐことができます。すぐに対策が取れるのは、透析患者にとって大きな安心材料といえるでしょう。

私たち透析患者は恵まれている存在。だからこそ、長生きをする努力をするべき

透析患者が直面する問題に、水分摂取の制限があります。一般的な目安としては、2~3日でドライウエイトの3~5%ほどにとどめるべきといわれています。つまり体重60㌔の私でいえば、次の透析を受けるまでの2日間で、摂取できる水分量は1.8㍑以内に抑えなければなりません。しかし、現実的にはかなり厳しい数字です。摂取する水分量が不足すると、足がつったり、慢性的に疲労を感じたりして生活にさまざまな支障が生じます。

私は健康に支障をきたさない範囲でなら、数値にとらわれすぎるのはよくないと考えています。水分摂取量を厳守しようとがんばりすぎて、真夏の暑い時期に熱中症を起こしてしまう人もいるのです。

私の場合、水分摂取の上限を2.5㍑と、通常より少し緩く考えています。実際にその上限ギリギリまで水分をとることはありませんが、1.8㍑という目標にとらわれすぎないことで、気持ちはらくになります。

マスクの装着など、徹底した新型コロナウイルス感染症の予防策を取っている板橋さん

私のような体験的な感覚は、医師は立場上からも教えることができません。だからこそ、透析患者は一人で苦しまず、患者会を利用するべきだと思います。自分が透析患者であるということを過剰に意識すると、かえってストレスが生まれます。ストレスで体調をくずしては本末転倒です。日常生活で直面する不安や疑問は、東腎協のようにすぐに相談できる患者会を利用して、できるだけ早く解決すべきだと思います。

現在の日本で透析を始める患者の平均年齢は70歳前後です。おっくうに感じて、患者会の活動に積極的になれない人も多いことでしょう。でも、それは非常にもったいないことです。

透析患者の患者会は、半世紀近い歴史があります。現在の透析患者が受けている高度な医療と福祉は、先輩患者たちの努力のおかげです。歴史をさかのぼれば、透析治療は更生医療の一環として始まりました。つまり、治療後の自立生活が期待できる若い世代を中心に支援する医療だったのです。現在ではご存じのように、老若男女誰もが等しく、ほぼ無償で治療が受けられます。

透析医療費は、1ヵ月40~50万円、年間400~500万円かかります。50年前には保険適用でも本人3割、家族なら5割の自己負担でした。「金の切れ目が命の切れ目」といわれたものでした。

透析生活を始めたばかりの人にはなかなか実感できないことですが、私たち透析患者はほかの重症疾病患者に比べて高額な医療費を税金で賄われており、かなり恵まれた存在だと思います。だからこそ、できるだけ健やかに、そして長く生きていく努力をしなければならないのです。

透析患者は外出を控え、手洗いとうがい、マスクの着用を徹底することが不可欠

昨今のコロナ()は、透析患者にとって大きな脅威です。基礎疾患がある我々は、新型コロナウイルスに感染すると重症化する危険性が高く、感染は生命の危機に直結します。

実は私自身が今年の2月に肺がんが見つかり、手術を受けたばかりです。幸い、Ⅰ期の早期で1週間ほどで退院できましたが、一段と新型コロナウイルスの感染対策を怠ることができなくなりました。

事務局ではアルコールの利用頻度が増えたと話す

新型コロナウイルスの感染を避けるために私たち透析患者ができることは、密接する場所を避け、手洗いやうがい、マスク着用を徹底することです。本来なら、運動療法の一貫として散歩や軽い運動をするべきですが、いまは可能な限り、外出は控えるべきだと思います。私は自宅でできる運動として1時間おきくらいにスクワット10~20回を行っていますが、大好きなゴルフもしばらくは我慢です。

東腎協でも新型コロナウイルス対策として、理事会や打ち合わせをオンラインで行っています。パソコンのモニターを通じて理事の皆さんと話し合うのですが、始めた頃は私を含めて操作に慣れず苦労しました。でも、必要な感染対策の1つなので、真面目に取り組んでいます。

日本透析医学会や日本透析医会など、透析治療に関連する団体では、新型コロナウイルスの流行が予兆されたときからさまざまな対策が提案されています。2020年9月4日時点で、全国の透析患者約34万人における新型コロナウイルスの累積感染者数は、235人です。そのうち、死亡者数は32人となっています。新型コロナウイルス感染症に()(かん)された方々には、心よりお見舞い申し上げます。一方で、透析患者さんが重症化しやすいといわれる中、この数字はまずまずの結果を示しているともいえます。

透析患者は年に約4万人のペースで増加し、毎日およそ100人が亡くなっているというデータがあります。単純に比較できるものではありませんが、新型コロナウイルス対策の成果は十分に出ていると思います。

透析患者は定期的に透析施設で血液検査やレントゲン検査などを受け、検温を行っています。さらに、従来からインフルエンザなどの感染症には非常に敏感です。一人ひとりの透析患者が感染予防に努め、万一の場合でも早期に発見できる環境が整っていたことが数字につながっていると思います。

ただし、透析患者が陥りやすいのが、体調の異変を放置してしまうことです。特に、通院期間が空く週末の2日間は、体調を維持するうえで要注意です。

私たち透析患者は、新型コロナウイルスに限らず、体調に異変を感じたときは、透析治療の際に医師に()てもらうことができます。ところが、土曜日に異変を感じたときは、「月曜に病院へ行くから」と放置してしまうことが多く、病状を悪化させてしまう人が少なくないのです。少しでも体調に異変を感じたら、すぐかかりつけの病院に行ったり、電話で相談したりするべきです。私も以前、息苦しさを感じていながら土日の2日間様子を見てしまい、肺炎を悪化させ呼吸困難に陥った経験があります。わずかな異変でも「命に関わるかもしれない」と思うようにしたいものです。

透析治療は進歩し、透析を受けながら50年近く人生を送れる時代になりました。私たち透析患者は、恵まれた時代と環境に生きています。だからこそ透析患者の皆さんには、自分にできることを徹底し、その恩恵を受けていただきたいと思います。

告知 東京腎臓病協議会からのお知らせ

透析に関する悩みの解決法が満載のコミック『新「透析バンザイ」』が好評発売中。読むだけで元気が湧くと、透析患者さんにも大好評です。

定価:990円(税込)
会員価格:900円(税込)
問い合わせ先:NPO法人 東京腎臓病協議会
☎03-3944-4048 FAX 03-5940-9556
MAIL info@toujin.jp