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娘の悪夢の原因が私のいびきだったと聞いて、「恥ずかしい」から「家族に迷惑をかけるもの」という認識に変わりました

有名人が告白
タレント 西村 知美さん

幼少期からいびきに苦しみ20代前半から旅行時には部屋を個室にしてもらっています

[にしむら・ともみ]——1985年、第1回ミス・モモコクラブでグランプリを受賞。1986年、映画『ドン松五郎の生活』で主演デビューと同時に、主題歌『夢色のメッセージ』で歌手デビューを果たす。マイペースなキャラクターで幅広い層から愛されるタレントとなり、女優、歌手、モデル、声優、ラジオパーソナリティーなどさまざまな方面で活動。資格を多数所持しており、著書に『私にもできた資格獲得30個』(講談社)がある。

恥ずかしくてあまり他人には話していないのですが、私は幼少期からいびきをかいていたらしいんです。後になって母から聞いた話では、幼稚園児のときに耳鼻科で診てもらい、アデノイド肥大と診断されたそうです。のどの扁桃腺が肥大する病気で、空気の通り道がふさがっているためにいびきを引き起こしていたと聞いています。

診断の結果、私はすぐに手術を受けることになったそうです。でも、まだ幼いうえになぜ手術を受けるのか知らされていなかったこともあり、怖くて泣きわめきながら手術を受けたことを覚えています。

手術の内容を母から聞いたのは、小学校の中学年くらいのころです。そのころには家族からいびきを指摘されることもなくなっていて、私のいびきは改善したものだと思っていました。

ところが、20代前半のときに思いがけない出来事が起こりました。お正月に家族旅行に出かけたとき、1つ年上の姉が朝から大笑いしていたんです。理由を聞くと、寝ているときに私がいびきをかいていたというんです。

当時はハンディタイプのビデオカメラが流行りはじめていたころで、姉は証拠として私の寝姿を録画していました。映像を見てみると、確かに私はいびきをかいていました。ただ、そのときはまだ「クークー」という寝息の延長のような小さないびきに聞こえたんです。これくらいなら許容範囲かと思い、自分のいびきをさほど深刻には考えていませんでした。とはいえ、「私はいびきをかくんだ」と自覚し、気をつけるようになりました。

西村さんは20代からいびきがあることを自覚し、対策を立てていた

その後、いまの夫と出会って結婚し、娘が生まれました。娘のつながりで複数のご家族と旅行することがあるのですが、基本的には大部屋でいっしょに寝泊まりします。でも、私はいびきが気になるので、「申し訳ないけれど、うちの家族だけは個室にしてください」とお願いしていました。ただ、夫の親族と旅行に出かけるときは、そんなわがままはいえません。親族旅行で大部屋で寝るときは、みんなが就寝するのを待ってから眠り、朝は誰よりも早く起きるようにしていました。

娘の悪夢に現れたオオカミのうなり声が自分のいびきのせいと知り、がく然としました

自分のいびきに対する認識が大きく変わったのは、ほんの数年前です。私はいま、中学3年生の娘と同じ部屋で寝ているのですが、娘が小学生のときに「怖い夢を見た」というんです。どうしたのかと聞いてみると、「学校にオオカミが入ってきて追いかけられた。うなり声がすごく怖くて、目が覚めたらママのいびきだった」といわれたんです。さらに、「パパと変わらない大きないびきだった」とまでいわれ、がく然としました。

当時の私は「いびきは男性がかくもので、女性がかくことはめったにない」と考えていたんです。「恥ずかしい」と考えていただけのいびきの認識が、「誰かに迷惑をかけるもの」に変わりました。

2015年のテレビ番組で、いびきの検査を受ける機会があり、睡眠時無呼吸症候群と診断されました。私はあおむけの体勢で眠っていたのですが、舌が長くて下あごが小さいため、寝ている間に舌がのどに落ちてしまうらしいんです。のどに落ちた舌が気道をふさいでしまうことで、いびきが起こっていたそうです。

実際、以前から夜中に息が苦しくて目が覚めることがありました。2018年の別番組で、「息を止めてみてください」といわれてやってみたところ、10秒が限界でした。ところが、睡眠時無呼吸症候群の検査では、睡眠時に10秒以上息が止まっている状態が何回もあることがわかったんです。

私は上級救命技能認定と甲種防火管理者の資格を持っています。無呼吸になって全身に酸素が行き届かないと、脳に障害が起こったり、命に危険が及んだりすることを知っています。眠っているときは、無呼吸を自覚することができません。家族への迷惑というだけの話ではなくて、健康という視点からも、自分が置かれている状況は笑ってはすませられないと思うようになったんです。

睡眠時無呼吸症候群を改善するため、呼吸器専門外来でCPAP療法という治療を受けることになりました。寝るときにマスクを装着して酸素を送り込み、気道を確保する治療法です。CPAP療法は私にとても合っていたようで、2週間ほどで効果が現れました。

最初は調子がよかったのですが、しだいに口や鼻の乾燥が気になるようになりました。さらに、CPAPは装置が大きいので、ロケ先や旅行先へは持ち運ぶことができません。効果的な治療法であるとわかっていても、CPAP療法は途中でやめてしまいました。

いまはいびきの改善のため、情報を集めて自分なりにいろいろな方法を実践しています。例えば、眠る体勢の改善です。インターネットで情報を集めたら、横向きで寝ると、いびきをかきにくくなることがわかりました。確かに、いびきが減ったと家族がいっていたので、できるだけ横向きの姿勢で眠るようにしています。

睡眠時無呼吸症候群が原因で起こる隠れ脳梗塞や動脈瘤が見つかって不安になりました

あごが小さく舌が長い私は舌がのどに落ちることでいびきが起こっていたんです

また、枕にもこだわっています。仕事の関係で、いろいろな枕を手にする機会がありましたが、どれも自分には合っていないように感じました。いびきの改善に取り組もうと考えたとき、真剣に枕と向き合ってみようと考えたんです。

たくさんの枕があり、自分に合う高さや柔らかさなどを実際に寝て試すことができる専門店に足を運びました。いろいろな枕を試して、「あ、ぴったりはまってる」と感じる枕に出合うことができたんです。以前は、寝ているといつの間にか頭が枕から落ちていることがあったのですが、枕を替えてからは朝まで頭の位置が変わっていません。いびきが減ったし、肩こりもらくになりました。

私は仕事がら、旅番組のロケに出かけたり、バスや列車などで夜間に移動したりすることがあります。そのさいには小顔矯正用のマスクを使うようにしています。ベルトをあごの下に通して頭の上でマジックテープで留めるもので、口が開かなくなるんです。自然と鼻呼吸になり、いびきも軽減するように感じています。

最近、テレビ番組の検査で隠れ脳梗塞が2個見つかり、別の番組では脳の血管に1.5㍉大の動脈瘤ができていることが判明しました。知らないうちに自分の脳に異変が起こっていることに、恐ろしさを感じました。

脳梗塞の原因に、睡眠時無呼吸症候群があるそうです。ただ、自称〝健康オタク〟の長嶋一茂さんから「みんな2個や3個はあるから大丈夫だよ」と励ましてもらいましたし、お医者様からも「2、3個程度ならかわいいものですよ」といわれています。一方、脳の動脈瘤については、3~5㍉の大きさになったらカテーテルで手術が必要だといわれ、いまは経過観察中です。

みずからの経験から、いびきは、単に恥ずかしいというだけではなく、命を脅かす重い病気につながりかねない危険性をはらんでいると痛感しています。私のいびきの告白を通じて、1人でも多くの方に、いびきの悩みを解決する勇気ある第一歩を踏み出していただけたらと願っています。