点眼剤の使い方を伝授! 緑内障の治療効果を高める6つのポイント

眼科

東京大学名誉教授 新家 眞

緑内障の9割は正常眼圧緑内障で推定患者数は486万人にも及ぶ

[あらいえ・まこと]——1974年、東京大学医学部卒業。同大学医学博士。東京大学医学部附属病院講師(眼科)、同大学医学部・眼科学教室助教授・教授、同大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学教授、関東中央病院病院長を経て、2021年から現職。関川病院病院長、関東中央病院名誉院長、埼玉医科大学客員教授、東京医科大学客員教授を兼務。日本眼科学会名誉会員(元理事長)、日本緑内障学会名誉会員(元理事長)、国際緑内障学会Council(元理事長)など。

緑内障は「視神経に障害をきたし、視野に欠損(けっそん)が見られる目の疾患群」と定義されています。緑内障は大きく分類すると「原発緑内障」「続発緑内障」「小児(発達)緑内障」の3つに分けられます。日本人に多いのは、発症原因が分からない原発緑内障に分類される原発開放隅角(げんぱつかいほうぐうかく)(りょく)(ない)(しょう)(広義)で、眼圧が正常範囲よりも高い「原発開放隅角緑内障(狭義)」と眼圧が正常範囲内の「正常眼圧緑内障」に分けられます。

以前は、国内において正常眼圧緑内障の患者数は少ないといわれていました。しかし、私も関わった2000~2002年の緑内障疫学(えきがく)調査(多治見(たじみ)研究)では、40歳以上の日本人における緑内障の有病率は5%であり、そのうち原発開放隅角緑内障(広義)が3.9%、正常眼圧緑内障はその9割を占めていたのです。

緑内障の有病率を2020年の人口統計をもとに計算すると、推定患者数は486万人に上ります。さらに、同研究によって緑内障の新規発見率は90%と判明しました。つまり、ほとんどの人が緑内障と診断されずに生活していたのです。

多くの割合を占める原発開放隅角緑内障(広義)の真の原因は不明で、最初に点眼によって眼圧を下げることが基本の治療となります。治療効果を高めるために、以下に挙げる6つの正しい点眼方法を実践しましょう。

①点眼前に手を清潔にする
手が汚れたまま点眼をすると、目に細菌やウイルスが入ってしまう可能性があります。その結果、眼球の表面を覆っている結膜(けつまく)に炎症を起こす感染性結膜炎を招く場合があります。点眼の前に手を洗うべきですが、手間を省くために身近にあるアルコールで手指の消毒を行えば、感染症のリスクを減らせます。

点眼瓶(てんがんびん)の先端を汚さない
点眼瓶の先端が不衛生になるいちばんの理由は、まつ毛や眼瞼(がんけん)(まぶた)に触れてしまうことです。まつ毛や眼瞼には細菌やウイルスが付着している可能性があるため、点眼瓶の先端が触れてしまうと汚染されてしまいます。多くの点眼薬は防腐剤が入っているので過敏になる必要はありませんが、まつ毛よりも少し高い位置から点眼するようにしましょう。

③点眼は一回につき一滴さす
点眼薬を2滴以上さしている人は意外と多いのではないでしょうか。通常の点眼瓶は、1滴で約40㍃㍑の点眼薬が出るように設計されています。目の構造上、点眼薬など外から入ってくる液体は20㍃㍑以上受け止めることはできません。そのため、点眼薬を2滴以上さしても、すべて目からあふれてしまい、無駄になってしまうのです。

点眼後は目を閉じて目頭近くを軽く押さえると薬の成分が吸収されやすくなる

④点眼後は静かに閉瞼(へいけん)し、涙嚢部(るいのうぶ)付近を軽く押さえる
点眼後は静かに目を閉じることで、薬の有効成分がゆっくりと眼内に吸収されます。目を閉じたら、目頭と鼻の間にある涙嚢部付近を軽く押さえることで、薬の貯留場となる結膜嚢(けつまくのう)内の濃度が維持されやすくなります。その結果、涙の出口である涙点から薬が出ていくのを防ぎ、有効成分の濃度を結膜嚢内にできるだけ維持した状態で眼内に吸収させることができます。

正しい点眼をすることで、感染症を防ぎながら効果的に治療が行える

⑤あふれた薬液は拭き取り、手についた薬液は洗い流す
多くの点眼薬は清潔な状態を保つために、防腐剤が含まれています。防腐剤は細菌の増殖を防ぐために使われ、通常であれば点眼薬を開封しても約1ヵ月間はじゅうぶんに無菌性が保たれます。ただ、防腐剤は私たちの体には悪影響を及ぼします。

点眼後に目からあふれた薬液は清潔なガーゼやティッシュで拭き取り、手についたらすぐに洗い流しましょう。薬液がついた状態のままでいると、目の周辺や手がただれてしまうこともあります。

⑥複数の点眼薬を併用する場合は、5分以上空けてさす
点眼をしてから薬の有効成分が目に浸透するまで、最低でも3分はかかります。そのため、複数の点眼薬を使用する場合、点眼後すぐに次の点眼薬をさすと、前に点眼した薬液は流されてしまって目に吸収されにくくなります。手間になってしまうと思いますが、点眼後は薬をじゅうぶんに吸収させるために、5分以上の時間を空けてから次の点眼をしましょう。

複数の点眼薬を使う手間を減らすために、「合剤」という複数の有効成分が入った点眼薬を使う方法があります。基本は単一の有効成分を点眼することですが、正しい点眼をしなければ眼病は快方に向かいません。そのため、複数の点眼薬が処方されていて、5分以上の間隔をなかなか空けられない場合は、眼科専門医に「合剤の点眼薬を使用できますか」と相談するといいでしょう。

緑内障は自覚症状に乏しく、視野の欠損に気づいたときは、すでに末期の状態まで進んでいるおそれがあります。視神経の障害は一旦進行してしまうと、治療を行っても回復は不可能です。緑内障は早期発見・早期治療が何よりも大切なのです。また、年を取れば取るほど有病率が高くなり、緑内障を患っている人が多くなるのも緑内障の特徴の1つです。年を取ったら半年~1年に一度は健康診断の一環として、眼科専門医のもとで検査を受けることをおすすめします。