武蔵野学院大学教授 輪嶋 直幸さん
6代目〝たいそうのおにいさん〟としてお茶の間の人気を博し、司会者としても活躍して好評を得ていた輪嶋直幸さん。
「健康つぼ体操」や「指先から始める脳いきいき体操」などを独自に考案し、現在は大学教授として教鞭を執りながら幼児の発育・発達の研究を行っています。全国の子どもから高齢者までの健康づくりに心血を注ぐ輪嶋さんに、ご自身の元気の秘訣を伺いました。
たいそうのおにいさんのオーディションに合格し多忙な生活になりました
私の出身地は北海道の蘭越町という、ニセコに近くてよく雪が降る地域です。ニセコというとスキーのメッカですが、意外とスキーをやる機会は少なくて、幼少期は友達と鬼ごっこをするなど、走り回ってばかりいた記憶があります。本格的にスポーツを始めたのは中学生からで、中学・高校では陸上部で短距離を走っていました。
高校卒業後、日本体育大学へ進むことに決めたのは、将来は体育の先生になろうと考えていたからです。そんな私が在学中から〝たいそうのおにいさん〟としてテレビに出演するようになったのは、お世話になっていた先生からある日、「テレビ番組のオーディションの募集が来ているけど、出てみないか?」と声をかけてもらったことがきっかけでした。
体育教師になると決めていたので、取り立ててテレビの世界に興味があったわけではないのですが、なんとなくいわれるがままにオーディションを受けてみました。すると、1次審査、2次審査、3次審査と次々に通過。結局、最終審査にも合格して、私はNHK『おかあさんといっしょ』(出演当初の番組名は『うたのえほん』)の6代目たいそうのおにいさんを務めることになったのです。
ほかにもおおぜいの学生がオーディションを受けに来ていたのに、なぜ自分が選ばれたのかと不思議に思いました。後から聞いた話では、子どもたちと遊ぶ姿がいちばん自然でしっくりしていたというのが理由だそうです。私はわりと丸っこい体形をしていましたから、絵面的にもよかったのでしょうね。
大学在学中はテレビの仕事をするかたわら、陸上競技も続けていましたから、それなりに多忙を強いられる日々でした。収録の都合で授業を休まなければならないことも多かったのですが、そもそも学校側からすすめられた仕事ということもあり、単位の面では随分融通してくれたように思います。教員免許も無事に取得することができました。
大学を卒業した後は、タレント活動をすっぱりやめて、目標にしていた体育教師になるつもりでした。ところが、NHKからの強い要望によって、たいそうのおにいさんを続けることになったのです。そのため、収録日以外の日に非常勤で体育教師として活動したり、幼稚園で子どもたちに運動を教えたりと、自分にできる範囲で子どもたちの指導にあたることにしました。番組を続ける上でも、こうした日頃から子どもと接し、身をもって幼児教育を学ぶことはプラスに働いていたと思います。
結局、途中からはたいそうのおにいさんではなく司会者に立場を変え、『おかあさんといっしょ』という番組には10年ほどお世話になりました。体を動かす仕事ですから、この10年の間にはさまざまなケガにも見舞われました。特に腰やひざに関しては、陸上競技で酷使していたこともあり、常に悲鳴を上げっぱなし。それでもカメラの前では笑顔を絶やさないよう、常に気を配っていました。
また、テレビの仕事をしていると、どうしても夜のおつきあいが増えますから、若い頃はかなり不摂生をしていました。60代になってから心筋梗塞を患ったのも、このときのしわ寄せかもしれません。
いまは食事をはじめ、家内に厳しく健康管理をされています。カロリーは控えめ、旬の野菜を中心とした食事をとっているためか、幸い体調は良好です。やはり、健康は日頃の心がけが大切ですね。
指を動かすのは脳にとっていいことでボケ防止にうってつけです
70歳を迎えた現在は、子どもたちに体操を教えたり、大学で教鞭を執ったりするほか、高齢者の方に向けて「指先から始める脳いきいき体操」などの指導をときおり行っています。
この体操はもともと『クイズ百点満点』というNHKの番組を担当していた頃、頭ばかりでなく少しは体も動かしましょうということで、手と指を使った「満点体操」を考案したのが始まり。手だけを使って脳を活性化することができるこの体操が思いのほか好評で、番組が終わった後も高齢者を対象に教えているのです。
実際、指を動かすのは、脳にとって非常にいいことで、ボケ防止にもうってつけ。そこで、いろいろな指の動かし方を考えて、少しでも楽しく、飽きずに取り組めるようにしています。こうした活動を通して、多くの高齢者の方とお会いする機会があります。総じて感じられるのは、やはり皆さん、年齢を重ねるほど動くのがおっくうになっているということ。しかし、これはいけません。
動くのをサボって家に閉じこもってばかりいると、人と接する機会も減り、体も心もどんどん衰えてしまいます。もちろん、高齢になればなるほど、いたしかたのない面もあるでしょう。
だからせめて、自宅でテレビを見ながらでも、「あははっ!」と大きく笑うことを心がけてください。「いひひっ」でも「うふふっ」でもなく、「あ」から笑うのがポイント。なぜなら、それがいちばん大きな口で笑えるからです。
たとえ作り笑いであっても、「あははっ!」と大きく笑えば脳はだまされてしまうものです。すると、気持ちも晴れやかになり、脳も活性化するはず。いつまでも健康で楽しく生きるために、ぜひ試してみてください。