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世界的大流行のウイルス対策にはビタミンDが大切

クマ先生の免疫学的なお酒と料理の楽しみ方

熊沢 義雄

[くまざわ・よしお]——医学博士(京都大学)。元北里大学教授。山梨大学大学院発酵生産学修了後、北里研究所、北里大学薬学部・理学部に40年間在職。順天堂大学医学部非常勤講師。専門は生体防御学(免疫学)。日本細菌学会名誉会員。現在は北里大学発のベンチャー企業の代表として奮闘中。

新型コロナウイルス感染の流行は、中国の()(かん)で始まり、イタリアに飛び火してヨーロッパ全域へ、さらに米国、特にニューヨークで大流行しています。日本でも政府から緊急事態宣言が出されるほど急速に感染が拡大している状況です(4月末現在)。

当初は、感染しても発症しない人が50%、軽症が30%、重症が15%、重篤が5%という情報もあり、新型コロナウイルスはインフルエンザ並みかそれ以下と推察されていました。それでも、ワクチンと抗インフルエンザ薬があるインフルエンザの場合、昨年1月の死亡者数は1685人もいたのです。一方、新型コロナウイルスにはワクチンも薬もありません。

新型コロナウイルスは感染力が強いのが特徴です。感染症を考えるうえで問題となるのは、「感染してからどの程度で発症し、重篤化するか」です。感染後に重症化しやすい人は、高血圧、糖尿病、動脈硬化といった生活習慣病がある人や喫煙者です。

結核予防のBCG接種を受けていると受けていない人を区別してウイルスに対する抵抗性を調べた疫学研究では、BCG接種を受けた人のほうが抵抗性を示していたそうです。どのようにして抵抗性が与えられるのか、その機序は分かりませんが、自然免疫を高めているのでしょう。

自然免疫とは、体に病原体が侵入したときに異物と察知し、炎症を引き起こして防御反応を引き起こすものです。細菌やウイルスは受容体で察知され、味方の防衛軍を呼んで炎症を引き起こすのです。

(けっ)(かく)は、かつて死の病といわれていました。高原に設けられたサナトリウム(療養所)で日光浴をすることが結核に効果があるとされていました。当時は分かりませんでしたが、日光浴をして皮膚の細胞でビタミンDを作ることで、結核菌に対する抗菌性を示す物質を作っていたのです。

ビタミンDは骨のビタミンとして知られていますが、最近では免疫のビタミンと考えられるようになりました。ビタミンDが不足すると呼吸器疾患、特にインフルエンザにかかりやすくなります。新型コロナウイルスも同様でしょう。

皮膚で作られるビタミンは血液中でたんぱく質と結合し、(じん)(ぞう)の酵素で活性型になりますが、十時間程度で半減します。活性型の濃度は遺伝的に厳密にコントロールされていますが、紫外線対策をしている人の多くがビタミンD不足か欠乏状態にあります。また、年を取るとビタミンDを作る力も衰えてきます。

先で触れたように、新型コロナウイルスに感染して重症化しやすいのは、生活習慣病に関連した病気を持っている人です。いい替えれば、慢性炎症をもっている人たちといえます。慢性炎症はさまざまな病気の根本原因です。炎症を起こすサイトカインが大量に作られると血液の流れが一気に悪くなるため、症状が重症化しやすいのです。

感染を防ぐために炎症は必要ですが、ブレーキをかけて適度にセーブすることが大切です。炎症が大きくならないようにするブレーキ役がビタミンDであり、ファイトケミカルです。ほかにも、善玉菌が多い腸内環境にするため、水溶性食物繊維を摂取するのもいいでしょう。いずれにせよ、ウイルスに感染しないことがいちばんなのは、いうまでもありません。