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その15:健康情報のウソ・マコト「ビールを飲むと太る?」

大野秀隆先生の「長寿の哲学」

理学博士 大野 秀隆

[おおの・ひでたか]——1930年、東京都生まれ。1953年、東京薬科大学卒業。東京大学医学部薬学科薬品分析化学教室で研究を重ねる。薬剤師。理学博士。画期的な発想から開発した悪臭対策エキス(OS液)が国内外のメディアで「消臭革命」として報道される。以後も研究を重ね、あらゆる世代を対象とした悪臭問題の解決に取り組んでいる。

ビールをたくさん飲むと太るといわれる理由に「ビール腹」のイメージがあると思います。大きなお腹の中年男性がうまそうにビールを飲み干しているイメージが「ビール=太る」という印象につながっているのかもしれません。ビールには腹がふくれるほどの栄養価があるかというと、そうではありません。アルコールのカロリーは7kcal/gです。ビールを飲むことでカロリーは補給されるので、過剰に栄養を取っている人には肥満の原因となるでしょう。

よく「ビール大瓶1本が日本酒のお銚子何本分」などの表現で比べられますが、ビールの大瓶1本(653ml)は約250kcalです。日本酒1合(180ml)は約200kcalですから、ビールのほうがややカロリーが多いといえます。この理屈から考えると、ビールは腹がふくれやすく、ビール腹になりやすいといえるでしょう。

日本酒を楽しむとき、つまみとして漬け物や、スルメなどの乾き物を好む人は多いと思います。私も漬け物は大好きです。欧米人がビールを飲むときは、ソーセージなどの油っこい食べ物といっしょに飲む習慣があります。お酒を飲むときに脂肪をいっしょにとると、吸収率が高くなるといわれています。欧米人のお酒好きにビール腹が目立つのは理由があるといえるでしょう。

夏に飲む冷えたビールは最高においしいものです。しかしながら、ビールの本場・ドイツでは、ビールは9℃前後が適度とされています。ビールはこの温度より高くても低くてもおいしくない、というわけです。夏にキンキンに冷えたビールを飲むときは、健康を考えるうえでも注意が必要です。反射的に血管や筋肉の収縮が起こって、心筋梗塞のリスクが高まるからです。おいしいビールを飲んだ後、「ウーン…」といって倒れないように注意したいものです。