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アメリカの学会が〝モンスター大根〟と絶賛した桜島大根で動脈硬化を防ごう

ご当地研究最前線
鹿児島大学農学部食料生命科学科生分子機能学研究室講師 加治屋 勝子

〝真の予防医学〟実現のため桜島大根に注目

世界一大きい大根としてギネスブックに認定されている桜島大根

鹿児島湾に浮かぶ桜島は、鹿児島県のシンボルとして知られています。北岳・南岳の二つの主峰からなる複合火山で、現在も毎日のように小規模な噴火を繰り返しています。2011年に起こった噴火は994回を数え、観測史上最多を記録しています。桜島は海に囲まれているために冬でも温暖な気候で、火山地ならではの軽石が特徴です。ボラ土壌と呼ばれる柔らかくて空気や水をよく含む畑は、桜島大根の生産に適しています。

世界一大きな大根としてギネスブックに認定されている桜島大根は肉質が緻密で繊維質が少ないために柔らかく、味は甘みに富んでいます。主に漬物として食される桜島大根ですが、生食や煮物、切り干し、空揚げにしてもおいしく食べることができます。

桜島大根には青首大根よりも4倍の一酸化窒素を産生する細胞が含まれている

私が桜島大根を研究するようになった背景には、毎日の食事からとれる食品で、真の予防医療を実現したいという願いがありました。果樹や野菜、米など鹿児島県内で栽培されている約300種類の農作物を一つひとつ調べた結果、血管のしなやかさを取り戻す効果が見られたのが桜島大根だったのです。

健康な血管は、ゴムホースのように伸び縮みして、心臓から送り出された血液を全身に送っています。血管は内膜、中膜、外膜の3層で構造され、内側から順に、内皮細胞、平滑筋細胞、コラーゲン線維層でできています。3層構造のおかげで、血管が強くしなやかに伸び縮みでき、血液を適切に送ることができるのです。ところが、ストレスや加齢に伴って動脈硬化(血管の老化)が起こると高血圧を招き、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こしてしまいます。

血管のいちばん内側に存在する内皮細胞は一酸化窒素を放出することで、血管の収縮や拡張を調整しています。体内で一酸化窒素を多く作り出すことができれば、しなやかに伸び縮みする血管を保つことにつながるのです。

トリゴネリンの量が青首大根の60倍!

桜島大根には、青首大根の60倍ものトリゴネリンが含まれている

桜島大根と市場やスーパーマーケットにいちばん多く出回っている青首大根を使って一酸化窒素を産生する細胞の数を比較する実験を行うと、桜島大根は青首大根の4倍もあることが分かりました。さらに、一酸化窒素の量を増やすトリゴネリンという成分が青首大根に比べて60倍も含まれていることも分かったのです。

トリゴネリンは血管機能を改善するほかに、脳の老化やアルツハイマー型認知症を予防する効果があるという研究成果があります。桜島大根の他にトリゴネリンを多く含む食材として、コーヒーの生豆が挙げられます。

その後の研究によって、桜島大根に含まれるトリゴネリンは、根だけでなく皮や葉にも多く含まれていることが分かりました。さらに、ゆでたり、揚げたりしても桜島大根のトリゴネリンは減少しなかったことから、調理法に関係なく手軽にとることができるのです。

桜島大根の最盛期は明治時代で、約200㌶(1㌶は1万平方㍍)もの広さで栽培されていました。しかし、桜島の噴火が続いたこともあり、1988年には桜島大根の栽培面積が約1.5㌶まで減少。現在は桜島の噴火頻度が減少したことから、徐々に桜島大根の栽培面積が増え、約10㌶まで回復しています。

桜島大根で一酸化窒素の産生量を増やすためには、おでんなら2~3個、大根おろしなら片手一杯分が一日の目安量です。毎日の食生活に桜島大根を取り入れると、動脈硬化や脳梗塞などの心血管疾患を予防することが期待できます。

桜島大根の研究結果は米国の科学誌に掲載され、アメリカ化学会で「モンスター大根の成分が心血管疾患の抑制に役立つ」と発表されるなど、世界各国のメディアで取り上げられました。鹿児島県の特産品である桜島大根の優れた機能性が多くの人に知られ、地域の活性化に貢献できれば研究者冥利に尽きます。
 

この記事は「健康365」2019年2月号に掲載されています。