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コロナ禍で明らかになった日本の医療の“急所”について書きました

著者インタビュー

太陽クリニック院長 髙橋 弘憲さん

新型コロナウイルス感染症の流行から1年半以上が経ちました。この夏に東京や大阪といった大都市圏を中心に急増した感染者数は減少しているものの、冬の第6波に対する懸念が報道されていることはご存じのとおりです。

世界中の研究者や医療関係者らの努力によって、新型コロナウイルスの本性は明らかになりつつあり、治療に対する問題点も見えてきました。にもかかわらず、我が国ではワクチン接種を推奨する以外に政策の進展が見られません。優秀な役人と感染症対策に精通する専門家が揃っているはずなのに…。

東京都で長く続いた緊急事態宣言は、2021年9月末をもって解除され、飲食業などの経済活動が再開しつつあります。それでもまだ、出口が見えないまま自粛生活を余儀なくされ、経済的に厳しい状況に追い込まれている人たちがいることも確かです。

1年半以上に及ぶコロナ禍は、日本社会の問題点を浮き彫りにした気がしてなりません。懸念されている第6波のみならず、今後も起こるであろう不測の事態に対してどのように向き合うべきか、特に若い世代の方々は真剣に考えなければなりません。自分や家族を守るためには、メディアの情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考える必要があるのです。

公衆衛生学のみならず、臨床医の意見にも耳を傾けるべきです

[たかはし・ひろのり]——1958年、宮崎県生まれ。1983年、自治医科大学卒業後、県立病院や医療過疎地にて勤務。自治医科大学血液学教室、宮崎県立延岡病院での勤務を経て、2001年、宮崎県延岡市に太陽クリニックを開院。幅広い臨床経験と「新鮮血観察」に基づく独自の医療活動を展開。内科専門医、血液専門医。主な著書に『「強運なからだ」を作る生き方』(総合法令出版)、『カラー版・血液が語る真実』『医療小説 ドクターGの教訓』(ともに論創社)など。

新型コロナウイルス感染症に関して“急所”ともいえる問題点は、日本の非効率な医療体制にあります。もう一つの急所は、医療体制の問題点に目を向けず、生活者に活動の自粛を提言しつづけた専門家と彼らを起用する政府、さらには、肩書を尊重しすぎるメディアと、発信される情報に疑問を持たない一般の視聴者です。現在の医療体制がこのまま続くと、今後も蔓延や収束のたびに緊急事態宣言と解除を繰り返し、日本経済の回復が見込めなくなるでしょう。 

この1年半、政府による緊急事態宣言は、既存の医療体制で対応できる患者数を天井値として発出されてきました。私から見れば、平時における患者数の基準を緊急時にも当てはめるのは、明らかな誤りです。コロナ禍と本気で闘う気があるのなら、緊急態勢宣言を発出した際は、非常事態に特化した大規模な医療施設を早期に新設すべきだったと思います。

それなりの肩書がある人が発する言葉は、根拠が伴わなくてもそれらしく認識されがちです。例えば、「無症状の若者たちが、自覚がないまま高齢者にウイルスを感染させた」という専門家の見解がありました。この見解を信じ込んだメディアは若者たちの行動を批判しましたが、私は若者たちが気の毒に思えてなりませんでした。生活圏を観察すれば、高齢者は高齢者、若者は若者どうしで行動していることがひと目で分かります。貴重な青春時代の学業や交遊を犠牲にしてまで厳しい行動制限する必要があったのか、甚だ疑問です。専門家たちは今後、第6波が来たときも若者たちに過酷な自粛を迫るのでしょうか?

文献やデータ分析を生業とする専門家の見解は、患者さんを直に診察している臨床医と大きく異なることが少なくありません。血圧を例にすると、公衆衛生的な思考は「この地域は高血圧が多い。そして、この地方は塩分摂取量が多いから、塩分は制限しないといけない。塩分量は1日7グラム以下が望ましい」となります。一方、まともな臨床医は「この人はどのような暮らしをして、どれくらい水を飲み、汗をかいているのか。ならば、この人にはこれくらいの水と塩分が必要だ」と、一人ひとりの生活環境を考えて判断します。

髙橋医師が院長を務める、宮崎県延岡市の太陽クリニック

新型コロナウイルス感染症でいえば、公衆衛生的な思考は「外に出たら感染しやすい。だから高齢者は家から出ないほうがいい」となります。高齢者の暮らしの現実を知る臨床医は「家の中にこもっていたら、筋力が落ちて免疫力も下がる。心身ともに弱ってしまう」と考えるでしょう。

新型コロナウイルス感染症対策に関わっているメンバーのほとんどが、公衆衛生学やウイルス学の学者たちです。私が知るかぎり、臨床の現場を知る医師はほとんど見当たりません。専門家はそれぞれの分野に精通し、そして有能です。だからこそ、広い知見を得るためにメンバーの専門性に偏りがあってはなりません。公衆衛生学の専門家のみならず、新型コロナ感染症の診療に携わっている現場の臨床医もメンバーに加えるべきなのです。

コロナ禍で医療体制が崩壊した理由について、私はこう考えます

著書や講演もこなす血液専門医の髙橋医師は、血液を分析して健康状態を診る「血液観察眼」の治療を取り入れている

政府のブレーンである専門家会議(当時)に「医療現場の意見に耳を傾ける」という知恵があれば、いまとは異なる社会・経済情勢が展開されたことでしょう。振り返れば、新型コロナウイルス感染症の対策において、いくつかの転機があったはずです。ところが政府は、活動の自粛をひたすら提言しつづけました。その結果、今年の夏には大都市圏を中心に感染者数が急増し、「ベッドが足りない」「入院できない」「治療が受けられない」「自宅待機をしていた患者さんが亡くなった」といった悲惨な報道が続いたのです。

世界一の病床数といわれる日本国内で、なぜこんなに病床が不足してしまったのでしょうか。その理由は明らかで、そもそも足りるはずがないからです。

現在、日本の医療体制は、平常時を基準に定められています。病床数も医療スタッフの人数も、コロナ禍以前の実情に合わせて決められています。しかも、病床の稼働率は100%に近づけることを目標とされるので、医療現場は常にほぼ上限の稼働率でやりくりしているが現状です。

病床数は病院長の裁量では増やすことができず、行政の認可が必要です。有事に備えて病床を空けている病院は、すぐに数を減らされてしまうおそれもあります。病床数の上限ギリギリで稼動している中、新型コロナウイルス感染症の患者に割り当てられるベッドは少なく、救急車に乗った患者を引き受けられないという事態を招いたのです。  

日本の医療崩壊を防ぐには、急所となっている医療体制の見直しが不可欠です。平常時はもちろん、緊急時を想定した医療体制が取れれば、日本の優秀な医療現場において医療崩壊は起こらないと思います。これは決して難しいことではありません。問題点の本質を見極めて動けば、すぐにできることです。

ワクチンは本当に安全?否定派の否定派として私が考えていること

「ワクチンを打てば新型コロナウイルスに感染しない」と勘違いしている人がいます。そもそも、ワクチンの接種には二つの目的があります。一つ目は「個人免疫」で、接種によって免疫を獲得し、感染時の発症や重症化を防ぐ目的です。二つ目は、本来の意義ともいえる「集団免疫」です。そのため政府は「ワクチン接種こそが感染の収束と経済活動再開の切り札」と考えているのでしょう。しかしながら、集団免疫を期待するのであれば、ワクチンを東京や大阪といった流行地の大規模会場で接種することで一気に抑えるべきだったのではないかと思います。

新型コロナウイルスのワクチンに関しては、推進派と否定派、さらには様子見派と、さまざまな意見があると思います。私自身は「ワクチン否定派の否定派」です。しかし今回、私のクリニックでは新型コロナウイルスのワクチン接種を引き受けませんでした。なぜなら、公的要素が強く、未知の面もあるワクチンは、自治体が接種会場を設置して専門スタッフを配置したほうが接種時の誤りが起こりにくく、効率的と思うからです。

新型コロナウイルスのワクチンは、これまでにない新しい技術で作られたワクチンです。しかも、世界的パンデミックという社会的事情によって異例の速さで接種が許可されました。

その一方で、長期的な安全性が確認されていないこともあり、私のクリニックでは接種協力施設の届けを出しませんでした。1年半前に見つかった新型コロナウイルスは以後、次々と変異していまに至ります。変異を繰り返したウイルスに対し、ワクチンにどれほどの効果が期待できるのかは分かりません。今後、ワクチンに対する抵抗力を持ったウイルスが現れれば、また新たなワクチンを開発しなければなりません。どんなにワクチンの開発を急いでも、ウイルスの変異スピードには追いつけないでしょう。

2021年10月現在、厚生労働省の発表によると、新型コロナウイルスのワクチン接種後に亡くなったとされる方は、1000人以上に上ります。ワクチン接種後に亡くなる方には、ある傾向が見られます。接種後に副反応に苦しんで亡くなるケースは少なく、多くは救急車を呼ぶこともないままに息絶えてしまうのです。

私が知っている一例を挙げると、ワクチン接種の翌日に突然死して検視を行ったものの、因果関係は不明とされました。死亡原因は脳出血や心筋梗塞、動脈瘤など血管系の障害が顕著とのことでした。「死因は持病によるもので、偶然のタイミングで起こった」と判断する医師もいるかもしれませんが、毎年約5000万人が接種して死亡者が数人というインフルエンザワクチンと比べてみても、この数字は看過できません。

血液の専門医である私の仮説として、新型コロナウイルスワクチンは、血管にダメージを与えている可能性があると考えています。「新型コロナウイルスは肺炎を引き起こすウイルス」という印象をお持ちの方も多いと思いますが、本性は血管内皮障害にあると推測しています。

ワクチンを接種すると、筋肉内に注射された新型コロナウイルスの遺伝子が効率よく血管内に吸収されます。そのため、自然感染よりも血管障害を起こしやすいと考えています。先に述べたように、私自身はワクチンを否定しない「否定派の否定派」です。しかしながら、現在までに分かっている事実を踏まえた結果、2回目の接種は控えています。

私は九州の地方都市で地域医療に携わる一介の医師にすぎません。コロナ禍において医療の最前線にいない私の意見は、的外れと思う方も多いことでしょう。このような立場の医師が提言書なる本を書くのは気が引けましたが、コロナ禍に沈み行く日本の姿を見るに忍びなく、厚かましくも書かせていただきました。この本が一人でも多くの方に届くことを願っています。

髙橋弘憲さんの著書
『コロナ騒動と日本の急所~一開業医の意見書~』(論創社)