プレゼント

朝まで眠ることが許されない、水責めの〝拷問〟のような病気。それがむずむず脚症候群です。

患者さんインタビュー
飯塚 慎司さん

[いいづか・しんじ]——1962年、北海道生まれ。子どもの頃から睡眠時の不快感に悩まされていたが、「誰でもあること」と思いながら大人になる。結婚後、自身の症状がむずむず脚症候群によるものと診断される。2005年頃から、むずむず脚症候群に関する情報を発信。現在はfacebookを中心に活動中。

「むずむず脚症候群になると、どんな感じになるんですか?」と聞かれると、いつも返答に困ります。どう表現していいのか分からないのです。インターネットでむずむず脚症候群について調べると、「脚を虫が這っているような感覚」などと書かれていますが、ほんとうにそのようなことがあれば飛び起きるでしょうから、やはり違うのです。ただただ耐えられない「不快感」が襲ってくるのです。

むずむず脚症候群に伴う不快感は、脚の表面というより、脚の内部から湧き上がるようにやってきます。困ったことに、この不快感は就寝後、深い睡眠に入ろうとする頃にやってきます。最初は脚を軽く動かしたり、さすったりすることで治まるのですが、だんだんと強い不快感に変わっていきます。そうなると、脚をバタバタしようがたたこうが、治まることはありません。もう寝ることは諦めて、起き上がるしかないのです。

布団から出て立ち上がるか、イスに座ると、不快感はだんだんと消えていきます。不思議なことに、しっかりと目を覚ませば覚ますほど、治まるのも早いようです。インターネットをなんとなく見ているより、刺激のあるゲームをしたほうが、不快感は早く消えていきます。しかし、やっと治まったと思って横になると、再び不快感に襲われます。結局、これを2度3度繰り返し、朝になる頃にやっと眠りに就けるのです。眠ることが許されない、水責めの拷問にあっているような感覚です。

むずむず脚症候群に伴う不快感は夜のみならず、昼でも襲ってくることがあります。長時間、飛行機に乗ったときはもう大変です。脚をバタバタするわけにもいかず、エコノミー症候群を防ぐふりをして、脚をマッサージするくらいしか対処法がありません。どうしてもつらいときは、客室乗務員に頼んで機内の後ろで立たせていただきました。事情を伝えないと、ただの怪しい人ですから。

私のむずむず脚症候群が特につらかったのは、高校生の頃でしょうか。授業中に不快感が現れたときは地獄でした。授業中にイスから立ち上がるわけにはいきません。貧乏ゆすりをすると多少和らぎますが、さすがに恥ずかしいのです。シャープペンで脚を何度も刺すなど、クラスメイトに分からないように脚に刺激を与えることばかり考えていたので、授業はほとんど耳に入りませんでした。

大学生になると、先生に申し訳ないと思いつつ、つらいときは授業を抜け出しました。夜勤のアルバイトをした後は、特に症状がひどかったことを覚えています。

社会人になったときの解放感はすばらしいものでした。私の場合、仕事中でも立って歩ける自由があったので、日中に苦しい思いをすることはほとんどなくなりました。でも、周囲の人からは、落ち着きのない人と思われていたかもしれません。

今回、コラムを書いてみようと思ったのは、私の子どもの頃の経験を伝える必要があると思ったからです。特に、教育に携わっている人に、私のコラムが届くことを祈っています。

かつての私がそうだったように、むずむず脚症候群の不快感に苦しんでいる子どもたちは少なくありません。先生からは「落ち着きのない子」と叱られ、場合によっては発達障害と判断されている可能性もあります。次回のコラムでは、私の子どもの頃について詳しく書いてみようと思います。