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脳と心が元気になる!認知症の予防にもつながる“パステルシャインアート”を体験

「認知症」この人に注目
アーティスト・一般社団法人日本パステルシャインアート協会代表 江村 信一さん

絵筆や絵の具を使わず、誰でも簡単に描けるパステルシャインアート。脳機能の活性化につながると、医療機関や企業研修での導入が広がっています。心のケアにもつながるという奥の深い世界を、実際に編集部員が体験してきました!

誰でも気軽に楽しめるパステルシャインアートは自己肯定感を高めて心の健康にも有効

[えむら・しんいち]

1979年、株式会社サンリオに入社、キャラクターデザインに携わる。1984年、キャラクターライセンス&デザインスタジオCISを設立。1995年、パステルで描いた光の絵(パステルシャインアート)のメソッドを確立し、一般社団法人日本パステルシャインアート協会を設立。著書に『世界でいちばん簡単な絵の描き方―パステルシャインアート入門』(PHP研究所)、『10分で描けるセラピーアート入門』(共著、JTBパブリッシング)など多数。NHKの番組『まる得マガジン』などに出演。

皆さんは、パステルシャインアートをご存じでしょうか。パステルシャインアートは、10分もあれば誰でもすてきな絵が描ける、まるで魔法のようなアートです。脳の活性化や心の働きをサポートする効果が確かめられ、医療の現場や被災地などで活用されています。

パステルシャインアートは、15㌢四方の画用紙に、パステルを削った粉を指やコットンで伸ばして描きます。筆や水や絵の具などは使わず、特別なデッサン力や表現力もいりません。 その秘密は、パステルという画材の温かみと、自分の内面と向き合い、感性のおもむくままに描くという、パステルシャインアート独特のプロセスにあります。絵の上手・下手という概念を超越した〝いまの自分〟を描くユニークなアートなのです。

私が考案したパステルシャインアートには、3つの大きな特長があります。

● 楽しく簡単に描ける(自己肯定感を高める効果)

パステルを削って粉にすると、通常のパステルや絵の具を使った場合と比べて、美しい混色やグラデーションを簡単に作り出すことができます。また、パステルで描いた絵は練り消しゴムで簡単に消えるため、安心して伸び伸びと描くことができます。自分の感性を信じて無心で描いていくプロセスが、パステルという温かみのある画材と調和して、満足度の高い出来栄えになるのです。

パステルシャインアートには、そもそも間違いや失敗という概念がなく、すべて正解です。だからこそ、誰もが天才アーティストだった幼い頃の自由な感覚を取り戻すことができ、自己肯定感が高まるのです。

江村さんのパステルシャインアート作品。柔らかな青・緑・黄のグラデーションが温かみのある美しさを醸し出し、いつまでも眺めていたくなる

● 対話の力を養う(社会性を高める効果)

人間の右脳は感性、左脳は論理性をつかさどっています。デッサンの技術は左脳でものの構造を覚える訓練をして身に着けていきますが、パステルシャインアートは右脳で描きます。まさに、自分の素直な感情と向き合い、心の声に耳を傾けながら絵を完成させていくプロセスを大切にするアートなのです。

正解がなく、誰もがすてきなアーティストになれるパステルシャインアートを描くと、誰もが自分の描いた絵に感動します。感受性が豊かになると、自然と他の人の描いた絵にも感動できるようになり、相手のよいところも見つけやすくなるのです。パステルシャインアートを体験すると、家族や友人から賞賛されたり、知らない人どうしでも声をかけ合ったりするようになります。褒めたり褒められたりするうちに、コミュニケーションを心から楽しめるようになり、社会性が高まるのです。

● 心の働きをサポートする(ヒーリング・リラクゼーション効果)

悲しみや怒りを感じているとき、パステルシャインアートを描くと心が軽くなります。うれしい気持ちのときに描いた絵からは、明るいエネルギーが湧き出ています。そして、心が沈んでいるときにその絵を見ると、うれしかったときの気持ちを思い出し、だんだん気分が明るくなっていきます。パステルシャインアートが持つヒーリング効果は、心療内科や精神科などの医療の現場や被災地などでも、心の働きのサポートが期待できるアートセラピーとして注目されています。

パステルシャインアートを描くときは、ワクワクしながら好きな色を選び、無心でパステルを削り、心穏やかに繰り返し円を描きます。そのプロセスそのものにもリラクゼーションの効果があるのです。

パステルシャインアートは認知症予防に有効で脳の血流量が増えると大学の試験で分かった

パステルシャインアートを体験しました!

パステルシャインアートの効果は、心の働きのサポートだけではありません。杏林大学医学部が行った試験の結果、パステルシャインアートを描くと脳の機能が活性化することが明らかになっています。

試験では、光トポグラフィーという機械を使って、パステルシャインアートとタッピング(コンピューターの画面に不規則に現れる数字を見て即座にボタンを押すことを繰り返す作業)を行ったときの、それぞれの脳の血流量を測定しました。その結果、パステルシャインアートを行ったときには、タッピングと比較すると、両側の前頭前野の血流量の明らかな増加が認められたのです。

パステルシャインアートによる脳機能の活性化は、認知症の予防にも有効といわれています。認知症は、認知機能の低下によって社会的な生活管理能力が失われた状態で、現代の医学では完治が難しいとされています。 とはいえ、夢中になれる趣味があったり社会的交流の豊かな生活を送ったりしていると、脳の柔軟性は高まり、活性化していきます。認知症を防ぐには、前向きに人生を楽しみ、他者と積極的にコミュニケーションを取ることが大切といえるでしょう。

脳の活性化が実証されているパステルシャインアートは、自己肯定感と社会性をともに高めることができるため、認知症の予防につながる効果が期待できます。また、指先でしっかりとコットンを握り、多彩な色の組み合わせを考えながら自分の好きなように描くことによって、脳が刺激されるのです。

年を重ねても自分の才能を開花させることで視野が広がり、豊かな毎日を過ごすことができる。そんなパステルシャインアートを、一人でも多くの人に描いてもらいたいと願っています。
 

この記事は「健康365」2019年5月号に掲載されています。