眼科・統合医療 ほんべクリニック院長 本部 千博先生
編集部:先生のクリニックでは、定期的に「親子で学ぶ視力回復教室(以下、視力回復教室と略す)」を開いているそうですね。
本部先生:はい。「お子さんの視力を回復させたい」と願っているご家族を対象に、主に近視を改善するための“ほんべメソッド”を教えています。2014年から始めていますから、もう6年目になりますね。
編集部:先生の近視治療における特徴を教えてください。
本部先生:近視のお子さんを持つご家族に伝えているのは、「近視は病気」ということです。「一度、近視になったら治らない」という間違った考えを改めていただくことから始めています。
編集部:「近視は病気」と聞いて驚かれるご家族もいるのではないですか?
本部先生:「病気だからこそ治る見込みがあります」と伝えています。「お子さんの近視を、私といっしょに治していきましょう」と伝えると、安心されるご家族が多いですよ。
編集部:「近視は病気」という先生のお考えを、もう少し詳しく聞かせてください。
本部先生:「近視は病気」という認識が乏しいのは、私たち眼科医のほうかもしれません。現在の眼科では、近視の子どもたちに対して、治すための治療をしているでしょうか?多くの眼科では、子どもの視力を測り、数値に見合ったメガネをすすめているだけです。メガネはあくまでも矯正器具にすぎません。整形外科の医師は、骨折をした患者さんに松葉杖を渡すだけで治療を終えるでしょうか?
編集部:メガネやコンタクトレンズだけでは近視の治療にならないと?
本部先生:メガネは必要なときにかける矯正器具です。漫然とかけつづけていると、近視がどんどん進行してしまいます。近視が進んだ子どもたちに、メガネの度数を上げる指導をするだけでは治療とはいえません。近視を治すことを目指すべきでしょう。文部科学省の調査によると、小学生の3割、中学生の5割、高校生の6割が裸眼視力0.1以下の近視です。最近では、近視児童の低年齢化も深刻になっています。
編集部:視力回復教室に来られるご家族は真剣でしょうね。
本部先生:近視のお子さんは、教室で黒板の文字が見えにくくなるので、勉強の能率が下がりがちです。目をこらして文字を見ると、眼精疲労や首や肩のこりにつながります。運動をするときは距離感やバランスを取りにくくなるので、健全な体の成長にも影響を与えてしまいます。お子さんはもちろん、ご家族のためにも、「視力を回復させてメガネを使わない生活にしてあげたい」という気持ちで指導をしています。
編集部:視力回復教室では、どのような内容を指導されているのでしょうか。
本部先生:多くお子さんの場合、近視の原因は過剰な勉強やテレビ、ゲーム、パソコン、スマートフォンなど、近くのものを長時間見続けている生活が原因です。
編集部:子供も目が疲れているのですね。
本部先生:目の疲労はもちろんですが、近くのものを見つづけることで、脳が「近くのものばかりを見ているから、もっと近くを見やすくしよう」と考えてしまうのです。近視の子どもたちは、目の中でレンズの役割を果たしている水晶体や、厚みの調整をする毛様体筋という筋肉も、脳からの指令によって近視モードになっているといえるでしょう。
編集部:視力回復教室では、近視モードになっている脳や目を改善する指導をされているわけですね。
本部先生:そのとおりです。遠くをよく見たり、視野を広くしたりするセルフトレーニングの習慣を身につけることで、近視の予防や改善が可能になります。近視を改善させるトレーニングは低年齢ほど有効で、正しく実践すれば再び裸眼で過ごせるようになりますよ。
温熱とピンホール現象が同時にできる!一石二鳥の機能で近視モードを変えよう!
編集部:本部先生が近視のお子さんやご家族におすすめされている、最新のアイテムについて教えてください。
本部先生:ひと言でいいますと、「ピンホール機能付きのホットアイマスク」です。着けるだけで目の周辺がポカポカと温まるホットアイマスクは、『健康365』の読者さんもご存知でしょう。
編集部:ドラッグストアなどで手に入る人気商品ですね。パソコンを使うビジネスマンやビジネスウーマンにも愛用者が多いそうです。
本部先生:ピンホールは、普段から目のケアをされている人や、視力を回復させたいと願っている人ならご存知かもしれませんね。
編集部:本部先生の場合、著書や雑誌で紹介されている、紙製のピンホール付きメガネが有名です。
本部先生:ピンホール付きメガネは、その名のとおり、中央部にピンホール(針穴)が空いているメガネです。ピンホール付きメガネをかけると、ピンホール現象によって近視でも物がよく見えるようになります。
編集部:近視で悩んでいる人なら、一度は試したことがあるかもしれません。強度近視の私も、ピンホール付きメガネを試したときに「これはよく見える!」と感動したことがあります。
本部先生:私たちがものを見るときは、レンズの役割をしている水晶体が厚さを変えてピントを合わせています。水晶体の厚みは、毛様体筋という筋肉が伸張することで調節されますが、先に述べた“近視モード”の脳や目になっている近視の子どもたちは、ピントの調節機能が衰えているのです。
編集部:ピンホール付きメガネをかけると、近視モードが解けるということでしょうか?
本部先生:はい。ピンホール付きメガネをかけると、光が一本の線として目に入ります。近視の原因である屈折の異常が起こりにくくなるので、毛様体筋を使って水晶体の厚さを変えなくてもピントが合うようになります。そのとき脳に「裸眼でも遠くが見える」と認識させることがポイントです。
編集部:近視の子どもが遠くを見るときに目を細めてしまうのは、目に入る光の量を減らそうとしているわけですね。
本部先生:目を細めることで擬似ピンホール現象が作れますが、そのときは毛様体筋に過剰な緊張がかかっているので、近視が進む原因になります。ピンホール付きメガネは目を細めることなく光の量を減らせるので、毛様体筋を休ませることができるのです。
編集部:ピンホール付きメガネは、緊張した毛様体筋をほぐして、脳や目を近視モードから解放してくれるのですね。
本部先生:ピンホール現象に加えて、ピンホール付きホットアイマスクの温熱作用も目のケアには有効です。ピンホール付きホットアイマスクは、42~45度の温熱が約30分間続きます。眼球に触れる部分が立体型のドーム構造になっているので、温熱が直接、眼球に触れることはありません。目の周辺をポカポカと温めながら、ピンホール現象を実感できます。心地よさを感じながら、脳に「遠くが見える」と伝えてあげましょう。ちょっと熱いと感じたときは、ときどき外したり、目の上に乗せたりするだけでもいいでしょう。近視のお子さんはもちろん、眼精疲労に悩む大人向けとしても使えます。
編集部:ホットアイマスクとピンホール付きメガネの合体は、ありそうでなかったアイケア用のアイテムです。一石二鳥の機能を、ぜひ近視のお子さんに試していただきたいと思います。