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ADHD女子・雨野千晴のうっかりさんでもちゃっかり生きる!第14回

ADHD女子・雨野千晴のうっかりさんでもちゃっかり生きる

雨野 千晴

決まったとおりが好き?自分で生み出すのが好き?

[あめの・ちはる]——北海道生まれ。北海道教育大学札幌校卒業。公立小学校教員として10年間勤務。2017年にADHD(不注意優勢型)と診断。現在はADHD専門ライフコーチ、NPO法人代表理事、福祉事業所スタッフなど"多動な"複業活動を展開中。

私は「人からいわれたとおりにやる」「決められたことを守る」のが苦手です。衝動性の強さがあるため、「こっちのほうがよさそう! 楽しそう!」と、直感で感じたほうに即行動に移してしまいがち。決まりきったことをルーティンとしてやることに面白みを感じられないということもあります。成果や義務よりも、常に自分が「面白い・やってみたい!」と思うのはどれか、という基準で行動していることが多いのかもしれません。それで失敗することも多いですが、やりたくないことをイヤイヤやるよりも、結局は成果が上がりやすい部分もあります。

さて、うちの次男は診断されていませんが、行動を見ていると私と同じADHDタイプだなぁと思うことが多いです。わが家はお手伝いを分担していて、長男はゴミ出しを、次男は洗った後に乾かしている食器を食器棚に戻すことをやってくれることになっています。それぞれに希望を聞いて決めたはずですが、次男は片づけるのにめちゃくちゃ時間がかかるのです。10個ほどしか置いていない食器を片づけるのに、わざわざ3回、4回に分け、2枚片づけたら休憩、また2枚片づけたら漫画を読む……というような感じです(笑)。それ片づけるの全部で5分もかからないでしょ……!?と思うのですが、彼にとってはどうやら「出してあるものをしまうだけ」というところになにも面白さを見いだせないことのようです。

1年くらいそんな感じでそれぞれの担当を続けていたのですが……。こんなにイヤイヤやっているのなら、ほかに彼がやりたいお手伝いを見つけてやったほうがいいんじゃないかな、と思うようになりました。

そこで、再度お手伝いとしてどんなことをやってみたいか、本人と話し合いました。学校の授業では、図工と家庭科が好きだといいます。ものを作ることに面白さを感じるようです。「それなら、週に1回、晩ご飯作りを担当してみるのはどう?」というと、嬉々として「やる!」との答え。実は彼の愛読書は「築地つきじ魚河岸うおがし三代目」という、非常に渋い料理漫画なのです。いずれは魚もさばいてみたいらしい……。というのは先の野望として、今回は一緒に作ったこともある、王道のカレーライスをお願いしてみました。

すると、準備に休み休みということもなく、とっても集中して一気にカレーライスを完成させてくれました! ニンジンは若干生煮えでしたが、そこはご愛嬌あいきょう。私とお兄ちゃんに「おいしい!」といわれたことも、彼にとってはうれしい出来事だったようでした。あの、超イヤイヤやっていた食器片づけのテンションとは大違い。目もキラキラと輝いていました。お手伝いの内容としては料理のほうが難しいし、やること自体も多いと思うのですが。

お手伝いでも、趣味でも、仕事でも、それぞれの脳タイプ、やりたいことに合わせて選ぶ、やりがいが感じられるかどうかを判断基準にするというのは、大事なことだよなぁとあらためて思った出来事でした。

一方で、自閉スペクトラム症の長男は、逆になにもないところから自由にどうぞ!といわれても困ってしまうタイプ。彼は決まった曜日の決まった時刻にゴミを出すことに使命感を持って取り組んでくれています。これまたキラキラとした表情。私が担当していた時は「今日生ゴミの日だったのに出し忘れた!!」と悲痛な叫びがたびたびわが家にこだましていましたが、彼が担当してくれるようになってからは「明日は燃えるゴミの日です。ゴミをまとめておいてください」とリマインドまでしてくれるので、出し忘れがゼロに! ありがたすぎます。

凸凹でこぼこ3人チームの雨野家は、今日もそれぞれの得意を生かしてなんとか生活しています。

イラスト/雨野千晴