日本先進医療臨床研究会理事 小林 平大央
実は医療後進国⁉日本のガン治療は欧米先進国に比べて30年以上遅れている
欧米先進国では、1990年を境にガンの発症率と死亡率は減少し、現在もその傾向が続いています。それに対して、G7に代表される先進7ヵ国の中で、日本だけがガンの発症率も死亡率も急激に増加しています。ことガン治療に関しては、日本は欧米先進国に比べて30年以上も遅れているのです。
なぜ、このような違いが生まれたのか——それは、欧米先進国で1990年頃に起こったガン治療に対する大変化が日本にだけ起こらなかったからです。その大変化とはなにかというと、ガン治療に対する方針転換です。
欧米では、1990年以前は「手術、放射線、抗ガン剤治療」という3つの治療法だけでほぼすべてのガンを治療していました。しかし、この標準治療だけではガンを治せないことがはっきりしたため、欧米各国は1990年を境にガン治療を統合治療に切り替えて成功したのです。つまり、ガン治療の方法を〝標準治療〟といわれる「手術、放射線、抗ガン剤治療」に絞ったやり方から、民間療法や伝統療法などの自然療法的な治療法や、東洋医学的な治療法、および食事療法やメンタル療法など、さまざまな補完・代替療法を組み合わせた統合治療を積極的に行う方向に転換したのです。
1990年以前、標準治療の中で抗ガン剤治療はこれまで完治できなかったガンを治せる画期的な新治療法として非常に期待され、米ニクソン大統領は1971年にガンの撲滅を目指す「ガンに対する宣戦布告」を宣言。巨額の資金を投入し、米国内でガン治療を研究開発する非常に多くの団体が生まれました。ところが、この新しい治療法はガンを根絶するどころが、逆にガン発症率も死亡率も増やすことが後に判明するのです。
米国上院議員で次期大統領候補と目されていたジョージ・S・マクガバン氏は、〝マクガバン委員会〟と呼ばれる「栄養と所要量に関する上院特別委員会」で数年間にわたって何度も公聴会を開いて専門家から聴取した内容をまとめ、1977年に「米国の食事目標」として報告しました。現在、これは「マクガバン報告」として知られる数千ページに及ぶ膨大なレポートです。
この中でマクガバン氏は、当時の米国での10大死亡原因の内6つの病気で食生活が大きく関連すること、特にガンにおいては栄養の問題が非常に重要であることを報告し、ガン治療に食事療法が欠かせないこと、糖分や肉類をとりすぎないことなどを提言しました。
そして、「ガンに対する宣戦布告」から約15年が経過した1985年、ガン戦争の流れの中で設立されたNCI(米国立ガン研究所)の当時の所長であるヴィンセント・T・デヴィタ博士が米議会で驚くべき発言をします。その内容は「分子生物学的に見て抗ガン剤でガンが治せないことは理論的にはっきりした。農薬を使うと農薬が効かない害虫ができるのと同じように、抗ガン剤も抗ガン剤が効かないガン細胞が発生する」というものでした。
しかし、抗ガン剤の問題はこれだけではすみませんでした。3年後の1988年、今度は所長の見解ではなく、NCI全体の公式発表として「抗ガン剤を使うと、元のガンのほかに新たなガンが何倍にも増える」という驚くべき内容のレポートが発表されたのです。
これらの発表を受けて、米国ではすぐにガン治療の問題を調査する委員会が組織されます。そして、約3年間の徹底的な調査の後、1990年に上院・下院の両議会にて、ガン問題調査委員会(アメリカ議会技術評価局、通称OTA)から調査報告書(OTAレポート)が発表されました。その報告は驚くべき内容で、米国議会およびNCIに対する命令に近い提言でした。
「調査結果により、標準治療(手術、放射線、抗ガン剤治療)では治らないとされた末期ガン患者が標準治療以外の代替医療でたくさん治っている事実が判明。議会はこれら治療法を詳しく調べ、国民に知らせる義務がある。
【提言1】代替医療は玉石混交のため、政府とNCIで早急に研究体制を整えるべき
【提言2】研究のために資金を投入すべき
【提言3】代替医療の普及のため、保険適用の対象とすべき」
OTAレポートの内容は米国をはじめ欧州各国に衝撃を与え、ガン治療の方針が標準治療と代替医療を統合した統合治療に転換した結果、日本を除く欧米各国のガン発症率と死亡率が減少に転じていくのです。この方針の変化は現在も続いています。
2022年9月、米バイデン大統領は、今後25年間で米国におけるガン死亡率を半減させるという連邦政府の計画を発表しました。ガン治療には効果的な検査が重要という考えのバイデン大統領によって発表されたこの計画の骨子は、1990年以降推進してきたガン統合治療と効果の高いガン血液検査を組み合わせ、いち早くガンに対処できる先制的なガン統合治療を確立することです。そのため、先進的なガン検査(リキッド・バイオプシー)の効果を臨床研究によって測り、効果的な検査と効果的な統合治療を組み合わせることでガンの死亡率を半減させると宣言したのです。
ところで、日本だけはなぜか現在も旧来の標準治療だけを行うガン治療を継続しています。その理由の1つに、日本独自の方針である「混合診療禁止」という暗黙のルールがあります。これは「保険診療の治療と自由診療の治療を同時に混合して行ってはいけない」という保険診療の医療機関に定められたルールです。
しかし、「混合診療禁止」のルールは保険診療を行う医療機関だけに適用されるルールであり、ガン患者さんには適用されません。また、効果的なガン治療を模索する自由診療を主として行うクリニックにも適用されません。
つまり、国民皆保険制度によって税金が投入されている安価で良質な医療を受けられる大病院やガンセンターと、先進的で効果的な自由診療が受けられるクリニックの両方に患者さんが通うのはまったく問題ないのです。そして、日本にも欧米並みかそれ以上のガン先制統合治療を行う医療機関が実際に複数存在します。こうした事実を知らない方が日本には非常に多いのです。先進的なガン統合治療の詳細を知りたいとご希望の方は当会までご連絡ください(後編に続く)。
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