プレゼント

〝怠け脳〟を〝がんばり脳〟に転換する「マッチ棒クイズ」

Dr.朝田のブレインエクササイズ!

メモリークリニックお茶の水理事長 朝田 隆

新しいアイデアを生み出すクリエイティブな人間になりたいと思っている人は、少なくないのではないでしょうか。しかし、その最大の障害は、新規性の高いものや思考力が必要なことを避けたがる〝怠け脳〟です。今回ご紹介する「マッチ棒クイズ」は、まさに怠け脳からの脱却におすすめです。

複雑な脳の働きを求める「マッチ棒クイズ」で水平思考を強化し〝がんばり脳〟へ大転換

[あさだ・たかし]——筑波大学名誉教授。1982年、東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科、山梨医科大学精神神経科講師、筑波大学精神神経科学教授などを経て現職。数々の認知症の実態調査に関わった経験をもとに、認知症の前段階からの予防・治療を提案している。著書に『その症状って、本当に認知症?』(法研)など多数。

今回の問題は、パズルとしては手軽かつ古典的な「マッチ棒クイズ」です。まずは例題をご覧いただいたうえで、本題に取り組んでみてください。意外なことに、調べてみたかぎりではマッチ棒クイズでどのような脳の機能が使われるかについての言及は見つかりませんでした。

マッチ棒クイズは、求められる認知機能の種類が多く、単純ではありません。マッチ棒を動かした後の状態を頭の中に描く必要があり、図形を横から見たり回転させたりするという想像力も求められるでしょう。つまり、複合的で広い意味での視空間能力が求められます。さらに、マッチ棒を動かす条件に沿って試行しなければならず、その条件のもとでの推論や論理的思考が必要になります。また、具体的には表現しにくいのですが、幾何学や数学に類似した独特の脳の働きが求められていると思います。

この種のクイズは、実は筆者もあまり得意でも好きでもありません。私などは、一目見てちょっと考えただけで、脳をフル稼働させないとできないような問題だと分かります。すると、問題に取り組もうと思った次の瞬間には、「参りました。勘弁してください」といってしまいます。ところが、論理性が好きな人や粘り強く考えることが好きな人には、この種の問題はたまらない魅力があるようです。

さて、「垂直思考」と「水平思考」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。論理的思考や分析的思考が垂直思考と呼ばれます。これは論理を深めるうえでは欠かせないものですが、斬新な発想にはつながりにくいようです。

一方、垂直思考に対して、エドワード・デボノという人が提唱したとされるのが水平思考です。これは発想法の根本を変え、いろいろな視点から物事を見る思考を指します。理屈や概念にとらわれずに直感的な発想を生み出す方法で、新たなアイデアを創造しやすいといわれています。

マッチ棒クイズを解くには、水平思考こそ大切だとよくいわれます。誰しも「想像力を豊かにしたい」「クリエイティブになりたい」と思っても、水平思考なんて縁もゆかりもないと思うのが普通です。しかも、人間の脳は基本的に怠け者。新規性の高いものや思考力が必要なことはめんどうくさいのでやりたくないのです。しかし、粘り強く深く考えつづけることで、自分でも思いがけないような回答に行きついた経験がある人も多いと思います。

マッチ棒クイズを解く過程は、脳を総合的に活性化するうえでとても有用だと思われます。また、マッチ棒クイズで必要とされるような頭脳と粘りが求められる場は、仕事、人間関係などさまざまです。

世の中の数多くの問題に対しても「水平思考が簡単に使えたらなあ」と私も思います。水平思考の訓練は、つまりは〝怠け脳〟から〝がんばり脳〟への転換です。それを目指すトレーニングとして、マッチ棒クイズは有用かもしれません。世の中にマッチ棒クイズは五万とあるようです。むしろ、私に似て苦手に感じる人こそ、ぜひお試しください。

マッチ棒クイズ:例題

マッチ棒でできた回廊です。マッチ棒を1本動かして、4ヵ所ある曲がり角を8か所にしてください

マッチ棒クイズ:本題

マッチ棒でできた迷路です。Uの字に曲がる場所が5ヵ所あります。マッチ棒を2本動かして、Uの字に曲がる場所を6ヵ所にしてください

答えは次ページです。

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