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ひざ関節症には足裏の筋力強化とお皿の筋肉ほぐしが有効で痛みが緩和[BALENA式トレーニング]

整形外科

総合リハビリ施設「Studio&Cafe BALENA」理学療法士  山下 侑哉

ひざ関節症や予備群の8割以上は足首に異変があり鍛えれば痛みの緩和も可能

[やました・ゆうや]——2015年、横浜リハビリテーション専門学校卒業。病院勤務などを経て、2019年より総合リハビリ施設「Studio&Cafe BALENA」(神奈川県横浜市青葉区)で理学療法士(副代表兼任)として勤務。BALENAは、食と運動に特化した半日型デイサービスの運営のほか、理学療法士のいる靴屋さんや障害予防に力を入れている自費の整体事業を運営。

私が所属する総合リハビリ施設「BALENA(バレーナ)」(神奈川県横浜市青葉(あおば)区)は、食と運動に特化した半日型デイサービスの事業を行っています。これまでの介護施設のイメージとは大きく異なり、通われる高齢者の人たちが「介護されている」と意識することなく、日常生活の延長として楽しめる施設を目指しています。

私たちの施設では、高齢者向けに講演会を開催する機会が、毎年80回ほどあります。多くの方から寄せられる悩みの一つが「ひざの痛み」です。私が勤める施設の利用者70名のうち、約3割は変形性ひざ関節症と診断名がついています。残りの約七割は、変形性ひざ関節症の予備群でひざの痛みに悩まれています。

私は理学療法士として、ひざの痛みを訴える方々の施術に携わっています。多くの方のひざを確認した経験から、ひざ関節症やその予備群である人は「足首・足趾(そくし)」に異変が起こっていることが多いと感じています。足首や足趾に問題がある人の割合は、8割以上といっても過言ではありません。

ひざ関節は、股関節(こかんせつ)と足関節をつなぐ役割を果たしています。土台である足関節が偏平足(へんぺいそく)外反母趾(がいはんぼし)でゆがむと、ひざ関節がバランスを調整しようとするため、正しい位置からずれはじめてしまうのです。

偏平足とは、足の裏にある土踏まずがつぶれ、足裏が平らになった状態です。外反母趾とは、足の親指(母趾)が小指側に曲がり、「く」の字のように変形した状態です。どちらも土踏まずがつぶれて足関節のゆがみを引き起こすため、私たちの体はひざ関節を内側、または外側に向けてバランスを保とうとします。この状態が何十年も続くとひざ関節の軟骨がすり減ってしまい、徐々に痛みを伴うようになります。そして、最終的には変形性ひざ関節症を発症してしまうのです。

そこで私たちは、ひざ関節に痛みがある人に偏平足の改善を指導しています。まずは自宅でできる簡単な偏平足のチェック法をご紹介しましょう(画像参照)。

偏平足は土踏まずのアーチを形作る靭帯(じんたい)(けん)、筋肉が加齢による変性や長時間の立位・歩行、無理な運動などによって機能不全を起こし、土踏まずを維持できなくなることが原因で起こります。土踏まずを作るには足裏の筋肉を鍛える必要があります。適切な方法で足裏の筋肉を鍛えると、足関節が正しい位置に戻り、ひざ関節の位置も修正されるのです。

また、ひざに痛みを抱えている人は、ひざ関節のお皿周りの筋肉が硬直している場合が少なくありません。お皿周りの筋肉が硬くなるとひざの曲げ伸ばしがスムーズにできず、痛みが生じるようになります。そのため、痛みを緩和させるには、お皿周りの筋肉の柔軟性を高めるといいでしょう。

今回は、足の裏の筋肉を鍛えながらお皿周りの筋肉を柔軟にする「BALENA式トレーニング」を二つご紹介します。どちらのトレーニングも1セットは3~5回で、1日2セットが目安です。トレーニングは実践する時間帯が重要で、朝と就寝前に1セットずつ行うことをおすすめしています。朝にトレーニングを行うと、体が整った状態で日中を過ごすことができます。そして、日中の活動で崩れた体のバランスを就寝前のトレーニングによって整えることで、睡眠の質を維持しながら翌朝を迎えるのです。この習慣が身につくと、少しずつ体が正しい状態に戻ることが実感できるようになります。ひざの痛みも徐々に緩和されていくでしょう。

変形性ひざ関節症の初期であれば、トレーニングを続けることで痛みのない生活を取り戻すことは十分可能です。「BALENA式トレーニング」を実践しながら、定期的に理学療法士の指導を受けたり、整形外科の医師にひざの状態を()てもらったりすることも重要です。