満たされた性によって得られる幸福感は、人生を豊かなものにしてくれます。この連載では、いつまでもゲンキで毎日を過ごせるよう、編集部が見つけた性に関するとっておきの情報をお届けします。
全国の読者さんから編集部に寄せられるさまざまな声の中には「年齢を重ねるにつれて男性機能の衰えを強く意識するようになった」という悩みが少なくありません。1998年に行われた疫学調査では、ED(勃起不全)患者さんの推定人数は約1130万人に上ると報告されました。また、2019年にED治療専門のクリニックが行った調査の結果では、EDの患者数は約1340万人に上り、この20年間で200万人以上増加したことが判明したのです。
2008年にまとめられた『ED診療ガイドライン』によると、EDを引き起こす最大の原因は加齢とされています。加齢とともに全身で動脈硬化(血管の老化)が進むと、血管が十分に広がらなくなって血液の循環が悪くなり、ペニスにも十分な血液が流れ込まなくなると考えられています。
また、糖尿病や高血圧症といった生活習慣病も動脈硬化を進行させるため、EDのリスク要因といわれています。さらに驚くべきことに、近年では慢性歯周炎に代表される「歯周病」がEDに関係していると注目されているのです。
2012年の米国泌尿器科学会で台北医学大学の研究グループが行った「ED患者さんには歯周病の人が多い」という発表が話題になりました。ED男性3万3000人と非ED男性16万2000人を対象とした5年間にわたる大規模な追跡研究によると、ED男性の慢性歯周炎の罹患率が27%に上ったのに対して、非ED男性の罹患率は9%にとどまっていたのです。
EDと歯周病についてさらなる情報を求めた編集部は、元佐藤歯科医院院長の佐藤優先生にお話を伺いました。佐藤先生は2019年11月の閉院まで、40年間にわたって東京都江東区で5万人に及ぶ患者さんを治療。地域に密着した歯科医院の院長として人気を博していました。
「口腔内の状態と下半身の状態は一見何の関係もないように思えますが、全身に張り巡らされた毛細血管でつながっていて、互いに影響を受け合っています。例えば、歯の治療が必要な患者さんが血圧を下げる降圧剤や血液をサラサラにする抗血小板薬を服用していたら、抜歯手術はできません。降圧剤で全身の血管が拡張されて歯茎が厚くなったり、抗血小板薬で血液が固まりにくくなったりした状態では、手術の際に歯茎から大量に出血してしまうおそれがあるからです」
一方、口腔内の血管障害も全身に悪影響を及ぼしてしまうと警鐘を鳴らす佐藤先生。歯周病による慢性的な炎症で歯茎の毛細血管が障害されると全身で動脈硬化が進み、勃起の維持に必要な血液がペニスに流れ込まなくなることも十分に考えられるといいます。
「歯周病の予防に有効なのが、食後の歯磨きです。特に、60代以降の方には歯ブラシといっしょに歯間ブラシも使うことをおすすめします。高齢になると歯と歯の間の隙間が広がるだけでなく、口腔内や舌の感覚も鈍くなるので、歯ブラシだけで歯垢を取り除くことが難しくなるのです。外出先などでどうしても歯磨きができない場合は、歯周病の予防効果のある洗口液を使うといいでしょう」
ていねいな歯磨きをみずから実践して毎日をはつらつと過ごしている佐藤先生。現在勉強中のスペイン語をマスターしたら「ヨーロッパを旅してラテン系の美女をデートに誘いたいですね」と笑顔で話してくれました。
口腔内の衛生は歯周病の予防だけでなく、男性機能の維持にも一役買っています。輝く歯と不屈の男性力の両方を手に入れ、充実したナイトライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。