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「食欲不振」のツボ 中脘・足三里

よっしー先生の特効ツボはここでヨシ!

帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科准教授 大山 良樹

[おおやま・よしき]——大阪産業大学経営学部、明治鍼灸短期大学鍼灸学科卒業。明治鍼灸大学助手・講師を経て、2008年から現職。日本東洋医学会、日本健康科学学会所属。

残暑が厳しいいまの季節は、体調をくずしやすくなります。体の変調をきたす一つの症状として、「おなかがすかない」「食事がとれない」「食べる気が起こらない」といった「食欲不振」が挙げられます。

食欲不振が起こったときは、消化吸収機能が弱っていることが多く、特に胃腸機能の低下が多く見られます。また、食欲不振はそのほかの原因によって起こる場合もあるので注意を要します。

【精神的な病気が原因で起こる食欲不振】
うつ病、認知症、神経性(しょく)()不振症(摂食障害の一つ)など。

【病気によらない食欲不振】
①加齢:年齢を重ねることにより、食欲不振が起こるようになります。

②ストレス:精神的あるいは肉体的なストレスがかかると自律神経のバランスがくずれて食欲不振となります。

③不規則な生活習慣:運動不足や睡眠不足といった不規則な生活習慣によって自律神経のバランスがくずれると、食欲不振が起こりやすくなります。また、運動量が低下して食事からエネルギーを補給する必要がなくなると、食欲不振となる場合もあります。

④飲酒:アルコールの摂取量が多くなると肝臓に負担がかかり、肝臓の機能の一つである解毒(げ どく)作用が低下します。肝機能が低下すると体のだるさとともに食欲不振が起こるようになります。

食欲不振は、消化吸収機能が弱っている状態で、胃腸の負担も大きくなっています。したがって、刺激物を控えて消化のよい食品を中心にとることが必要です。特に避けてもらいたい食材としては、繊維の硬い野菜(ゴボウ・タケノコ・山菜・根菜類)、食材自体が硬いもの(イカ・タコなど)です。脂身の多い肉や揚げ物なども控えるようにしましょう。そのほか、生もの(刺身など)や冷たい飲食物、お菓子などの甘いものも避けるようにしましょう。

また、食欲不振を招きやすくする脱水症状を防ぐために、適切な水分補給も必要です。水やお茶、スポーツドリンクなどで水分摂取を心がけましょう。

今回は、食欲不振に効果のあるツボを二つご紹介します。

(ちゅう)(かん)」のツボは、食欲不振や消化不良などに効果があります。中脘はみぞおちとへその中間にあるツボで、手のひら全体で円を描くように優しくなでましょう。5回を1セットとし、3セット行ってください。また、ツボの周囲が冷えている場合は、温かいおしぼりをツボの周囲に乗せたり、カイロ(下着の上から貼る)を使用したりしてもいいでしょう。そのほかにも、市販されている(えん)(とう)(きゅう)(筒形のお灸)を使って、ツボ周囲が軽く発赤(はっせき)(ピンク色になること)する程度まで刺激するのも効果的です。

次に「足三里(あしさんり)」のツボですが、親指の腹で円を描くように5秒間押し当てて刺激します。これを5回、計3セット行いましょう。押す力は、親指の(つめ)の色が白っぽくなる程度が適度な刺激の強さです。押して気持ちいい圧で、左右の足三里のツボを押してください。

指圧効果によって、おなかが「グルグル」と鳴ったら、胃腸に刺激が伝わったサインです。やがて食欲が出てくることでしょう。また、中脘のツボ同様に足三里を円筒灸で刺激しても効果的です。ぜひ試してみてください。

由来
【中脘】中脘の「中」は「当てる」「中央」という意味があり、「脘」は胃袋という意味があります。「中脘」は胃袋の中央部に位置するツボで、胃を丈夫にするとともに胃の症状を和らげるということから名付けられました

【足三里】足三里の「里」は村や住んでいるところの意味があり、「集まる」「通じる」ことを指します。「三」はひざ下外側のくぼみから3寸の位置にあるという意味があります。また、腹部を三区分して上焦(じょうしょう)(へそから上の部分)、中焦(へそを中心とした部分)、下焦(へそから下の部分)の病気を治療するツボという意味もあります

効能
【中脘】めまい、乗り物酔い、二日酔い、動悸食欲不振・胃痛・嘔吐(おうと)・消化不良・胃の膨満感・しゃっくり・便秘・頭痛・不眠など

【足三里】食欲不振・胃痛・胃下垂・腹痛などの消化器系疾患や脚の疲れ、自律神経失調症、ひざ痛・歯痛など