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モンゴル産の黒クコをもっと日本に広めたい!

ニッポンを元気に!情熱人列伝
一般社団法人モンゴルの風 理事 谷﨑 義治さん

過酷な自然環境で育つ黒クコの機能性に魅せられています

[たにざき・よしはる]——1941年、熊本県八代市生まれ。熊本大学理学部卒業後、大手化学メーカーの日本油脂(現・日油)に入社。研究や製品開発に携わりながら、米国企業との合弁会社や子会社の代表を務める。退職後は一般社団法人モンゴルの風の理事として、日蒙間の人材交流やモンゴル産の生薬・食材の普及に努めている。

熊本県八代やつしろ市で生まれた谷﨑さんは、現在78歳。もともとは家業の農家を継ぐつもりだったそうですが、弟さんのほうが農業に適性があったことから、谷﨑さんは大学を目指すために高校へ進学したそうです。

「勉強はもともと好きでしたね。いまでも思い出すのは、小学6年生のときの自由研究です。八代平野で採取できる植物を研究して発表したら、先生からとてもほめられました。モンゴル産の植物を普及させる活動のルーツは、この自由研究にあったのかもしれません」

熊本大学には志望していた農学部がなかったことから、谷﨑さんは理学部化学科に進学。学生数20人ほどの小さな学科には、個性的な面々がそろっていたといいます。

「同級生の中には、太陽光発電の開発者で後に三洋さんよう電機の社長を務めた桑野幸徳くわのゆきのりさんもいます。熊本大学を卒業した後は化学メーカーの日本油脂ゆし(現・日油にちゆ)に入社。塗料や油化学の部署に配属された私は、『海外の大手企業や国内のライバル企業には作れない、すごい製品を開発するぞ』と意気込んで、新しい界面活性剤やウレタン素材などの研究開発に取り組みました」

忙しくも充実した谷﨑さんの会社員人生に大きな転機が訪れたのは、43歳のときでした。同年齢の奥さんが、乳がんと診断されたのです。奥さんの回復を何よりも願った谷﨑さんは、「妻の看病をしたい。閑職でかまわないから、時間の融通が利く部署に異動させてほしい」と会社に懇願したそうです。

「異動はかないましたが、治療のかいなく、妻は1年後に亡くなりました。その後に再婚しましたが、当時、息子が思春期で家族が不和になり離婚。すべてを投げ出したい気持ちでしたが、異動先の技術部でモンゴルとのご縁をいただいたのですから、人生分からないものです」

谷﨑さんが異動した技術部では、消泡剤の技術輸出がきっかけとなり、アメリカの大手化学企業の1つであるW.R.グレース社と合弁会社を作ることになりました。社風が異なる海外企業とのマッチングには壁ができやすいといわれますが、谷﨑さんに合弁会社の社長職の辞令が出たのです。48歳のときでした。

「死別に再婚、離婚とさんざんな状態だった私は、『ヨ~シ、このさい、クビをかけてやってやる!』と意気込んで、新会社の事業となる化学技術を調査しました。世界中を回って事業のヒントとなる研究開発を勉強しながら、なんとか経営者らしくなったのは、就任3年目からです。その後、60代でニチユソリューション社の社長になり、引退。子会社の社長までいったのですから、いいサラリーマン人生だったと思います」

大手化学企業で約40年間、研究や製品開発に携わってきた谷﨑義治さん。奥様の病気を機に大きく人生が変わったという谷﨑さんは、モンゴル産の黒クコを日本で広めるために奮闘されています。

仕事を引退した谷﨑さんとモンゴルの間で縁が生まれたのは、2003年のことです。退職後にシニアボランティアとしてモンゴルで経済学を教えていた日油の先輩・元山芳彰もとやまよしあきさんが「モンゴルはおもしろいところだからおいでよ」と声をかけてくれたことがきっかけでした。2年後の2005年に、谷﨑さんは初めてモンゴルを訪れました。

「モンゴルというと緑の草原を馬が疾走しているイメージだと思いますが、国土の多くは砂漠や山岳地帯です。町を移動するときは、広大な草原や砂漠を車で走るのですが、モンゴルの自然は厳しく、昼夜の寒暖差が30℃になるときもあります。紫外線も強烈ですし、砂漠で車が故障したら、オオカミに襲われて命を落としかねません」

谷﨑さんによると、モンゴルで最も多く見かける日本製品は中古車で、その8割がトヨタのプリウスだそうです。モンゴルは石油を100%ロシアから輸入していますが、質があまりよくないため、燃費がいい日本車は大評判なのだとか。

「モンゴルとご縁ができてから、甘草かんぞう麻黄まおうといったモンゴル産の生薬と出合いました。厳しい気候を生き抜いているモンゴル産の植物は機能性が高く、日本の企業からも少しずつ問い合わせが増えてきています」

モンゴル産の植物や生薬を扱う地元企業にとって、大きなライバルとなっているのが中国の企業です。駆け引きが上手とはいえないモンゴルのビジネスマンは、同じ素材を扱っても中国産の後塵こうじん/rt>を拝しているのが現状だそうです。

乾燥させた黒クコの実

「中国とライバル関係にある食材で私が力を入れているのが黒クコです。黒クコは、ブラックゴジベリーと呼ばれる植物で、抗酸化物質が豊富に含まれています。中国では黒クコが大ブームで、国家レベルで研究が始まっています。モンゴル産の黒クコもこの流れに乗りたいのですが、なかなかうまくいきません」

黒クコはモンゴルや中国など標高1500㍍以上の高原の砂漠に自生している植物です。毎年6月頃に開花し、9月頃に直径4~9㍉の黒い果実をつけます。優れた健康・美容効果が期待できる〝秘草〟として珍重されてきた黒クコは、学名を「Lycium ruthenicum Murray」といい、モンゴルではゴビアルタイ地区やバヤンホンゴル地区に生育しています。

黒クコの普及を通じて親日的なモンゴルと日本の交流を深めたい

抗酸化力を示すTEAC値を測定した結果、モンゴル産の黒クコにはブルーベリーの40倍の抗酸化作用があることが分かった

「モンゴルでは、秋に収穫した黒クコの実を、直射日光が当たらない風通しのいい場所に広げて数日待ちます。水分量が少なくなった段階で直射日光に当て、果皮が硬くなるまで乾燥させます。乾燥させた黒クコの実を水に入れると、美しい紫色の色素が溶け出して、4~5分後には美しい紫色の水になります」

谷﨑さんが注目しているのは、モンゴル産の黒クコが秘めている機能性です。研究機関の調べによって、モンゴル産の黒クコには、ブルーベリーの40倍以上の抗酸化作用があることが分かりました。

谷﨑さんは黒クコの普及を通じて日本とモンゴルの橋渡しをしたいという

「モンゴル産の黒クコを広めたいのは、親日的なモンゴルの人たちの存在があるからです。モンゴルは経済的に豊かな国とはいえませんが、人々は温かい心を持ち、たくましく生きています。日本人だと思っていた大相撲の力士が実はモンゴル人だったってことがありますよね。モンゴル人は日本人と肌が合うんですよ。モンゴルの歌もどこか日本の民謡のリズムに似ていて、聞いていると心地いいんです」

地政学の視点でいえば、国土を海で囲まれている日本と対照的に、モンゴルは周囲を他の国に囲まれています。大国からの脅威を防ぐためにも、モンゴルの人たちは日本との関係をとても重視しているそうです。

乾燥させた黒クコの実を水に溶かした〝黒クコウォーター〟を毎日飲んでいる谷﨑さんは、元気いっぱい! 健康・美容への意識が高い人は、ぜひ一度、試していただきたいと、熱く語ってくれました。

私もモンゴル産の黒クコを応援しています—茅原 紘さん

信州大学名誉教授 茅原 紘さん

[かやはら・ひろし]

中国やベトナムで教鞭きょうべんを執ってきた私は、長年にわたり、アジア産の植物が秘める健康効果に注目しています。顕著な抗酸化作用を発揮する黒クコは、美容や健康維持への優れた効果が期待できる〝スーパーフード"として世界中から注目を集めています。クコの実は、中国料理や漢方生薬として用いられることから、黒クコも中国産が主流になっていますが、モンゴル産の黒クコはより強い抗酸化作用を発揮する可能性があることが示唆されています。厳しい自然環境の中で育ったモンゴル産の黒クコが、健康と美容に欠かせない食品として日本で普及することを期待しています。