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がんの原因は遺伝子のコピーミスではなく炎症を抑える活性酸素?

がん治療の進化を目撃せよ!

日本先進医療臨床研究会代表 小林 平大央

がんになる人とならない人がいるのは〝老化〟が原因ではなく〝免疫力〟の差にあり

[こばやし・ひでお]——東京都八王子市出身。幼少期に膠原病を患い、闘病中に腎臓疾患や肺疾患など、さまざまな病態を併発。7回の長期入院と3度死にかけた闘病体験を持つ。現在は健常者とほぼ変わらない寛解状態を維持し、その長い闘病体験と多くの医師・治療家・研究者との交流から得た予防医療・先進医療・統合医療に関する知識と情報を日本中の医師と患者に提供する会を主催して活動中。一般社団法人日本先進医療臨床研究会代表理事(臨床研究事業)、一般社団法人ガン難病ゼロ協会代表理事(統合医療の普及推進)などの分野で活動中。

日本では「がんは2人に1人がなる病気」といわれています。しかし、これはがんの罹患(りかん)状況を示す正確な表現ではありません。通常、成人はその身体の中にがん細胞が毎日5000個以上できるといわれています。しかし、1個のがん細胞が画像検査で検知される腫瘍(しゅよう)という細胞の(かたまり)(直径7㍉以上のがん組織)になるには10~20年以上の長い年月がかかるとされています。また、毎日できるがん細胞を体内の免疫力が細胞死に誘導してくれているため、多くの人はがんを発症しないのです。

なぜそれが分かったかというと、死体解剖という制度があるからです。がんと診断される人は70歳以上の高齢者の方が多いのですが、がんと診断されずに死亡した高齢者の方でも解剖するとほぼ全員の体内からがんの組織やがんの痕跡(瘢痕(はんこん)という)が見つかるのです。

がんが体内にあっても特に悪さをせずに寿命までおとなしく成長しないでいるか、または途中で免疫力によって小さくなるか死滅・瘢痕化してしまえば問題にはなりません。つまり、がんの発病(罹患状況)が2人に1人というのは「たまたま病院でがんと診断された人が約50%だった」ということなのです。

これまで、70歳以上の方にがん患者さんが急増することから、老化ががんの大きな原因と考えられてきました。がんは遺伝子のコピーミスによって遺伝子に変異を起こして発生すると考えられていたため、老化によって遺伝子のコピーミスが頻繁に起こってがんになるのではないかと推測されていたのです。

しかし、この老化原因説では、若い人ががんになる理由や高齢でもがんにならない人がいる理由を説明できません。そこで現在では、遺伝子変異が起こるのは、がんの〝原因〟ではなくて〝過程〟ではないかと唱えられはじめ、がん関連学会の主流の考え方も変わりつつあります。

まず、遺伝子変異が起こる前になんらかの原因(ウイルスや菌類、農薬、化学物質、電磁波など)で臓器や組織を形作っている細胞膜の表面に炎症が起こり、炎症を止めようとしてリンパ球などの免疫細胞が大量に集まってきて活性酸素を放出します。すると、活性酸素が遺伝子を傷つけ、その結果として遺伝子が変異してがん化してしまうのではないかと考えられるようになってきたのです。

ただし、あちこちの臓器で炎症が起こって細胞の遺伝子が変異してがん細胞が生まれたとしても、免疫力がしっかりしていればがんを成長させることはありません。つまり、免疫力の低下と、抗炎症反応から免疫細胞が活性酸素を過剰に放出して遺伝子変異が同時に起こることが、がん発症の真の原因なのではないかと考えられるようになってきました。

では、免疫力はどうしたら落ちてしまうのでしょうか? 実は、免疫力を落とす最大の要因は「心の問題」なのです。

心理的ストレスやショックが体に大きな影響を与え、免疫力を低下させることは医学的に証明されています。第二次大戦中のナチスによっても、人は過剰なストレスを与えられるだけで死に至ることが非人道的な人体実験で確かめられています。

第3回日本先進臨床医学会学術集会の会場にて。『体は治りたがっている』(パレード刊)の著者・龍見昇たつみのぼる先生(左)と『難病治療はなぜ成功しないのか?』(幻冬舎刊)の著者で当会顧問・藤田亨ふじたとおる先生(中)とともに

これらの結果から、人の免疫力を最も落とすのは不安や恐怖だとされています。特に最愛の伴侶や子どもを亡くしたことで人生の目標ややる気を失い、生活習慣が乱れてがんになってしまったという症例は数多くあるようです。

心の次に免疫力に大きな影響を与えるのは「栄養状態」です。免疫細胞の具体的な姿は、白血球という細胞です。白血球は、たんぱく質とビタミン、ミネラルを多く必要とするため、食事からしっかりとたんぱく質やビタミン、ミネラルの補給ができていなければ免疫力が低下してしまいます。つまり、ファストフードやインスタント食品、加工食品などの食品添加物をたっぷりと含む食品ばかり食べて栄養状態が悪いと、免疫力を落とす大きな要因となります。

さらに、「生活習慣・住環境」なども免疫力を落とす大きな要因になります。喫煙や多量の飲酒、放射線・化学物質といった環境因子は免疫力を落とすだけでなく、がん細胞を作る元になる慢性炎症を引き起こします。

このようにして免疫力はさまざまな要因によって低下します。しかし、若いときほど免疫力が高いため、70歳以下の人はよほどの原因が発生しない限り、がんになる可能性が低いと考えられています。つまり、体の中ではほぼ全員ががん細胞を保有するものの、治療が必要となるような状態になる前にほとんどの場合は免疫力で細胞死に誘導してしまうために発病・発見されないのです。ただ、最近ではストレスの多い競争社会による先述の〝よほどの原因〟が増加しつつあることは否めません。

運悪くがんが発見された場合でも、こうした知識を事前に知っていた人はがんに対する恐怖心が知らない人よりも少なく、発病要因と対処法(心・栄養状態・環境要因)を冷静に理解するため、がんを克服できる場合が多いようです。一方で、こうした知識を事前に知らない人はがんと告知されると心理的ストレスが大きくなって不安と恐怖にさいなまれ、免疫力を著しく低下させてしまいます。その結果、がんと闘う意欲がますます減ってしまい、身体・心理状況ともに悪化します。

がんは、心・栄養状態・環境要因の整備に加えて、適切な治療と免疫強化法でかなり対処できる場合があります。こうした事実から「がんは必要以上に怖がったり、不安に思ったりしないほうがよい」「がんは多くの不幸な条件がそろわないと大きくなれない」ということを、がん告知の前に知っていることは非常に有益だといえるのです。