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「むくみ」のツボ 復溜・委中

よっしー先生の特効ツボはここでヨシ!

帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科准教授 大山 良樹

[おおやま・よしき]——大阪産業大学経営学部、明治鍼灸短期大学鍼灸学科卒業。明治鍼灸大学助手・講師を経て、2008年から現職。日本東洋医学会、日本健康科学学会所属。

立ち仕事をしている方は、夕方になると足のだるさとともに「むくみ」を経験されることが多いと思います。むくみの原因は、私たちの体の約60%を占める水分量と関係しています。

私たちの体内にある水分の3分の2は「細胞内液」という細胞の中にある水分です。残りの3分の1は血液に含まれる「細胞外液」で、細胞と細胞の間にある水分です。細胞外液は、全身の細胞に栄養を送ったり、老廃物を除去したりしながら、体内の水分バランスを保つ役割も果たしています。

ところが、水分バランスがなんらかの原因で崩れて、細胞と細胞の間に水がたまることがあります。これがむくみと呼ばれる状態です。むくみはいわゆる俗称で、医学用語では「浮腫(ふしゅ)」といいます。むくみを大きく分けると、一過性のむくみと慢性のむくみに分けられます。

一過性のむくみ
立ち仕事やデスクワーク(長時間にわたる座位での仕事)などによって同じ姿勢で過ごすと下肢(かし)の血流が滞り、血液が下半身にたまった状態になります。むくみが起こる主な原因として、塩分やアルコールの過剰摂取、生理によるホルモンの変化、睡眠や運動不足、ストレスなどの影響が考えられます。

慢性的なむくみ
慢性的なむくみの原因としては、心不全、(じん)不全、肝硬変(かんこうへん)などから起こるむくみがあります。慢性的なむくみは一過性のむくみと異なり、数日では軽減せずに、むくんでいる部位を指で押すと指の跡がつくのが特徴です。慢性的なむくみが疑われる場合は、専門医の診察を受けることが大切です。

そのほかの原因としては、食事の偏りから起こる栄養失調、ふくらはぎの血管が膨らむことで起こる下肢(かし)(じょう)(みゃく)(りゅう)、乳がんなどの手術によってリンパ節を切除した際に起こるリンパ浮腫などがあります。

自宅で実践できる、むくみ別の解消法をご紹介します。

【顔のむくみの解消法】

①冷水・温水による洗顔
朝起きた時に顔のむくみを感じたら、冷水と温水を交互に使って洗顔をしましょう。冷水と温水の血管収縮と血管拡張による相乗効果でむくみが解消されやすくなります。

②ホットタオルを使う
電子レンジで約1分間加熱したおしぼりタオルを、顔の上に載せて温めます。顔の血行をよくすることで、むくみの解消を促します。

③顔のマッサージ
滑りのいいクリームを使って、顔の中央から外に向かって手のひら全体でマッサージをします。さらに、耳から下あご、(けい)()を手のひらを使ってマッサージしていきましょう。耳から下あご周辺はリンパ節があるため、特に入念にマッサージするといいでしょう。

【全身のむくみの解消法】

①ひざ・足首のストレッチ
ひざを曲げ伸ばしたり、足首を回したりします。適切なストレッチによって筋肉や関節をていねいにほぐすことは、むくみの解消につながります。

②体全体のマッサージ
例えば、足のむくみを取りたい場合は、足先から大腿部(だいたいぶ)に向かって手のひら全体を使ってマッサージを行います。そのほか、床に寝た姿勢で脚を壁やベッドに載せるなど、心臓の位置より高く上げることでもむくみを解消しやすくなります。

③入浴時は湯ぶねにつかって温まる
体全体を温めることで、血流が促進されます。湯ぶねの中では、ふくらはぎを中心に、手のひらで(まっ)(しょう)から中枢に向けてマッサージをすると、むくみの解消につながります。

④カリウムが含まれる食材をとる
むくみ対策として、カリウムの摂取が有効です。カリウムが含まれるバナナ、リンゴ、メロンなどの果物を積極的にとりましょう。

そのほかのむくみ解消法として、ツボ刺激も有効です。むくみの解消に有効なツボを二つご紹介します。最初のツボは「(ふく)(りゅう)」です。ひざを曲げて足が床に着く高さのイスに座り、両手で包み込むようにしながら親指で刺激します。内くるぶしに向かって5秒間ゆっくりと押して刺激していきます。これを5回、計3セット行いましょう。

()(ちゅう)」のツボは、「復溜」と同じように足が床に着く高さのイスに座り、足を少し前に出します。中指をひざ裏の中心に当て、親指でひざの上部を挟みます。この時に両手を使い、左右の中指を「委中」に並べます。「委中」の周囲で痛むところや気持ちのいいところを探してください。ゆっくりと中指に力を入れて5秒間を5回、計3セット行いましょう。押す力は、「復溜」「委中」ともに指の(つめ)の色が白くなる程度が目安です。「委中」のツボは、テニスボールを置いてゴロゴロと動かして刺激するのも有効な方法です。ぜひ、試してみてください。

由来
復溜】「復」は伏する。「溜」はとどまる。復溜のツボがある部位は、経気(経絡の気)がとどまり、再び深く入って流れることから名づけられました

委中】「委」は委ねる。「中」は真ん中という意味。ひざを曲げた時、真ん中にあるツボということから名づけられました

効能
復溜】むくみ、腰背部痛、腎炎、咳嗽(がいそう)、耳鳴り、寝汗、足部の冷え、高血圧症など

委中】ひざ痛、変形性ひざ関節症、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)、腰痛、腓腹筋(ひふくきん)(ふくらはぎ)のむくみなど