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〝医笑同源〟で人生100年!

著者インタビュー

NPO法人・健康笑い塾主宰、日本笑い学会理事 中井 宏次さん

毎朝の「笑顔体操」で笑いの健康効果を実感してください

[なかい・こうじ]——大阪薬科大学卒業後、製薬会社に勤務。薬剤師。2007年、NPO法人・健康笑い塾を設立し、生活における笑いの重要性を啓発する活動を開始。日本笑い学会理事、日本産業ストレス学会理事、岡山大学非常勤講師も務める。薬家きく臓の芸名で落語もたしなむ。健康分野のみならず、教育や経営に対する笑いの効果の講演活動も展開。

私のライフワークは「笑い」です。具体的には、「笑い(ユーモア)によって健康で心豊かな歓びのある生活と人生を実現すること」をテーマに活動しています。

私は50歳のときに甲状腺がんと診断されました。告知を受けた瞬間は、脳天をハンマーで打ち砕かれるようなショックを受けました。幸いにも早期発見だったので、いまは元気に過ごしています。

体調が回復した後、「いただいた命で社会貢献をしたい」と、強く思うようになりました。そこで、大学時代から取り組んでいる落語の経験を生かし、笑いによる健康効果を広めようと思いました。その後は、志をともにする仲間たちとNPO法人・健康笑い塾を立ち上げて、いまに至っています。

現在の私は「笑いと健康」をテーマに、年間100回を超える講演を全国で行っています。講演会と並行して、健康に対する笑いの効果の学術的な検証を、専門家の先生方とともに続けています。例えば、私と一緒に日本笑い学会の理事を務めている大平哲也先生(福島県立医科大学教授)は、「笑いの頻度が少ない人は認知機能が低下しやすい」ことを明らかにしています。また、大阪にある吉本興業の劇場・なんばグランド花月で行われた試験では、笑うことによって免疫細胞の1つであるNK細胞が活性化することが確かめられているのです。

コロナ禍が続いています。健康面や経済面での不安が募る中、「笑っている場合ではない」とお叱りを受けるかもしれません。それでも私は、「こんなときだからこそみんなで笑いましょう」と、皆さんにお伝えしたいと思います。今回、私が紹介するのは、「朝の笑顔体操」です。これは、テレビのお笑い番組を見て笑わせてもらう受け身の笑いではなく、みずから笑う積極的な笑いです。「笑うのは苦手」という方もいるかもしれませんが、みずから笑うことで心に潤いが生まれ、癒しにもつながります。

次に紹介する「笑顔体操の10ヵ条」を毎朝実践し、みずから笑うことを習慣にしてみましょう。

① 鏡を見て笑う
朝起きたら、鏡に映っている自分に元気な声と笑顔で「おはよう!」と挨拶をしましょう

② 口を大きく開けて「あ・え・い・お・う・あ・お」と声を出す
顔全体の筋肉をほぐすようにして、2~3回繰り返しましょう

③ 口を大きく開けて「いーっ」と声を出す
のどの筋肉が鍛えられて飲み込み力が高まるので、誤嚥の予防につながります。2~3回繰り返しましょう

④ 舌を使って「笑み筋」を鍛える
えくぼができる「笑み筋」を舌で押し上げるように刺激します。健康維持に役立つ唾液の分泌力も向上します

⑤ 耳を刺激する
耳には健康の維持に役立つツボが多くあります。「いた気持ちいい」程度で刺激しましょう

⑥ 顔全体をほぐす
魅力的な笑顔を引き出す表情筋を優しくほぐしましょ

⑦ 「ハヒフヘホ」で笑う
「ハッハッハ」「ヒッヒッヒ」「フッフッフ」「ヘッヘッへ」「ホッホッホ」と3~5回笑いながら、鏡で笑顔を眺めましょう

⑧ 鏡の中の自分をほめる
「いつもがんばってるね」「今日もきれいだね」「幸せだね」など、鏡に映る自分に向かって前向きな言葉をかけ、脳を喜ばせてあげましょう

⑨ ネガティブな気持ちを吐き出す
嫌なことは鏡に向かって吐き出しましょう。鏡の中にいるもう1人の自分が「そんな顔をせずに笑おうよ」といってくれるはずです

⑩ もう1人の自分と話をする
もう1人の自分とは、あなたが発揮できる本当の力のこと。あなたのことをいちばんよく知っている自分と話すことで、あなたが秘める潜在能力が引き出されます

10か条のうち、後半になるほど実践が難しく感じるかもしれません。それでも毎日試みることであなたの笑顔はより魅力的になり、いままで感じなかった力を発揮するきっかけとなるでしょう。かの有名なオノ・ヨーコさんは、「鏡に向かって微笑みなさい。毎朝そうすることで、あなたは人生における大きな変化を理解しはじめるでしょう」といっています。毎朝の笑顔体操に、ぜひチャレンジしてみてください。

※笑顔体操のイラストは、『笑は咲にして勝なり~人生100年時代の指南書~』(薬事日報社)より改変しています。

コロナ禍のマスク越しでもポジティブな感情は伝えられます

コロナ禍といわれる現在、多くの方が感染対策としてマスクを着けて過ごしていると思います。笑いの効用の一つに、コミュニケーション力の向上によって人間関係が円滑になることが挙げられますが、マスクの着用は笑顔を伝えにくくしてしまいます。

在宅勤務の広がりで、オンライン会議をしているビジネスマンは多いと思います。そこで、マスクを着けたままでも笑いや笑顔の効用を享受できる方法を「マスク時代の笑顔マネジメント」と題してアドバイスしたいと思います。

マスク越しの会話や、オンライン上のコミュニケーションで大切なのは「感情マネジメント」です。以下の三点を意識してみましょう。

① ポジティブな感情を伝える
人間の思考や行動、意思決定には「感情」が大きく関わっています。そのため、論理だけで円滑なコミュニケーションを成立させるのは限界があります。

感情には、ポジティブな感情(笑い・楽しみ・満足・安心)と、ネガティブな感情(悲しみ・怒り・恐れ)の2つがあります。あなたがポジティブな感情を伝えると、相手のモチベーションも高まり、コミュニケーションが円滑になります。お互いの人間力向上にもつながります。

② 顔だけでなく、心でも伝える
マスク越しに無理に笑顔を作っても伝わりにくいものです。感情を「心で伝える」ことを意識すると、相手にポジティブな感情が伝わりやすくなります。

目に青葉 山ほととぎす 初鰹

これは、江戸時代中期の俳人・山口素堂が詠んだ有名な俳句です。目で感じた青葉の鮮やかな色、耳で感じたホトトギスの美しい鳴き声、鼻と口で感じた初鰹の味と香りを素直に表現しています。五感と心で感じたことを素直に表現した素堂の感情は、時を経ても多くの人に伝わるのです。

③ アイスマイル・コミュニケーション
ポジティブな言葉を発していると、自然と笑顔があふれるようになります。言葉には明るさと前向きさ、説得力が生まれるようになっていきます。

コミュニケーションを取る際は、相手の目を見ることが大切ですが、ずっと相手の目を見つづけて話をするのは逆効果です。普段は相手の目からやや下を見て話し、しっかり伝えたいときに相手の目を見て話すといいでしょう。オンライン上のコミュニケーションも同様に、ここぞというときにパソコンのカメラを見て強調すると、相手に気持ちが伝わりやすくなります。

122歳の長寿を叶えた女性が答えた長寿の秘訣は「笑顔」

薬剤師でもある中井さん。「薬家きく臓」の芸名で披露する落語も大評判!

「人生100年時代」といわれます。国際的な調査を見ると、日本人は世界的に「長命の国」として知られています。その一方で、日本人には寿命と健康寿命の間に平均10年間の時間があることをご存じでしょうか。健康寿命は「介護が不要で自立した日常生活が過ごせる期間」と定義されます。つまり、私たち日本人は、天寿をまっとうするまで約10年間も介護が必要な時間を過ごしているのです。

私が講演でよく話すのは、122歳という、世界で最も長生きをしたフランスの女性、ジャンヌ・カルマンさんのエピソードです。天国に行く直前まで元気な脳と心を保ちつづけたカルマンさんは、長寿の秘密を尋ねられたときに、「いつでも笑顔を保ちなさい。それが私の長寿を説明する方法です」と答えたそうです。長命ではなく、本当の長寿を叶えるには、カルマンさんが挙げた「笑顔」が欠かせないと思っています。

私の座右の銘は「仕事は楽しく、人生はおもしろく」です。笑顔と笑いのある毎日を送ることで、ともに叶えられると信じています。

中井宏次さんの著著
『笑は咲にして勝なり~人生100年時代の指南書~』(薬事日報社)