患者さんと医療従事者、医療事業者をつなぐ〝かけ橋〟として患者目線の活動を展
私が理事長を務めるJ-BREATHは、正式名称をNPO法人日本呼吸器障害者情報センターといいます。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や間質性肺炎など、慢性呼吸器疾患の患者さんと、そのご家族のための患者会・患者支援団体として活動しています。患者さんやご家族の他、一般社団法人日本呼吸器学会に所属されている医師の先生方などに支えられて、今年で設立20周年を迎えることができました。
J-BREATHは、1999年に主人と立ち上げました。1999年にCOPDと診断された主人の症状は、すでに悪化した状態でした。酸素吸入を行う酸素療法を始めると息苦しさは治まったものの、当時はいま以上に呼吸器疾患への認知度が低かったことから、酸素ボンベを携帯して外出するたびに、主人は周囲からの視線を気にしていました。また、酸素療法は24時間続けなければならないことからも、COPDの発症を機に、主人の生活は大きく変わりました。
呼吸器疾患の患者が抱えている生きづらさを少しでも解消するために、主人は患者会を設立。世の中へ呼吸器疾患をもっと知ってもらうための活動を始めました。私は主人を支えながら、他の患者さんたちから集まった生の声を、医師の先生方や在宅酸素療法の医療機器メーカーなどに伝え、医療や研究開発のお手伝いをさせていただいています。
COPDなどの呼吸器疾患は、突然、呼吸機能に異変が現れることは少なく、多くの患者さんは呼吸器の機能が徐々に低下していきます。高齢になってから発症することが多いため、患者さんたちは「息が切れるのは年のせい」と思ってしまい、治療の開始が遅れてしまうことも少なくありません。息切れが起こると外出はもちろん、動くこともおっくうになります。家に閉じこもることで呼吸器の機能がさらに低下するという悪循環に陥ってしまうのです。現在、日本国内には、COPDなどの呼吸器疾患の潜在的な患者さんが、500万人以上もいるといわれています。
呼吸器疾患は患者数が多いものの、糖尿病や慢性腎臓病、がんといった病気に比べて患者会の数は多くありません。その理由の一つは、患者さんにとって外出が困難であるという、呼吸器疾患ならではの背景があると思います。
もし、あなたやご家族、ご友人が呼吸器疾患と診断されても、諦めることはありません。私たちJ-BREATHでは、会員になっていただいた方々に『呼吸器障害者のためのハンドブック』をお渡しして、生活の質を高めるアドバイスをさせていただいています。
創刊100号を超えた機関紙『J-BREATH』では、長年にわたって呼吸器疾患の患者さんを診てこられた専門医の先生方の解説記事をはじめ、栄養士さんが考案された料理やレシピの紹介、イベントや講演活動の日程や開催報告を掲載しています。
機関紙の中で特に力を入れているのが、「患者さん訪問」というインタビュー記事です。COPDや間質性肺炎の患者さんのご自宅を訪問し、発症の経緯や現在の生活についてレポートしています。前向きに生活されている患者さんたちの姿をそのまま伝えることで、会員さんの生活の質が高まるヒントになればと思っています。
『健康365』の2019年7月号に掲載された内田幸男さん(板橋サンソ友の会)も、私たちの機関紙にご登場いただいています。雑誌などのメディアと連携を取りながら、呼吸器疾患の患者さんの生の声を、より広く世の中へ発信していきたいと考えています。
患者さんたちにとって患者会の存在は、ときに堅い印象を持たれることもあるようです。私たちの活動に少しでも関心を持っていただくために、昨年にはホームページを親しみやすい印象にリニューアルしました。ホームページでは呼吸器疾患の患者さんへ向けたお役立ち情報を提供するとともに、医療講演会やラング・ウォーク(呼吸器疾患の認知度向上や禁煙の呼びかけを目的としたウォーキングイベント)といったイベント情報、患者さんの生活の質を高める呼吸リハビリの普及活動などについて掲載しています。ぜひ一度、アクセスをしてみてください。
J-BREATHでは、電話によるお悩み相談も受けつけています。一人で悩まれることなく、ぜひ私たちに遠慮なく声をおかけください。一人ひとりの患者さんの声が多く集まることで、呼吸器疾患の患者さん全体の生活の質が高まると思っています。