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足腰の痛み・しびれを和らげる[空気イス運動]

整形外科

越谷市立病院副院長・整形外科部長 大野 隆一

空気イス運動は腸腰筋を強化して腰部を安定させ痛み・しびれを解消

[おおの・りゅういち]——1981年、順天堂大学医学部卒業。医学博士。順天堂大学非常勤講師。1994年より越谷市立病院整形外科部長。2015年より現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医・脊椎脊髄病医・リウマチ医、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科専門医・指導医。

(よう)()(せき)(ちゅう)(かん)(きょう)(さく)(しょう)(以下、脊柱管狭窄症と略す)は、軽度の場合や手術後のリハビリテーションには、運動療法が非常に有効です。運動療法を継続すると、足腰の筋力が強化されて姿勢の改善や腰部の安定につながります。また、足腰の血流が改善されることで、痛みやしびれが和らぐ効果も期待できます。

脊柱管狭窄症の痛みやしびれを改善するための運動として、腹筋・背筋を鍛える筋肉トレーニング(以下、筋トレと略す)やストレッチ、水中ウォーキング、水泳などが挙げられます。特に、浮力が働く水中で行うウォーキングや水泳は陸上での運動よりも抵抗が少なく、足腰への負担が軽くなるのでおすすめです。週に1~2回、1時間の運動量を目標に、初めのうちはできる範囲で取り組みましょう。

プールから上がった後はジェットバスやサウナで体をよく温めてください。私のおすすめは、ジェットバスの中でストレッチを行うことです。湯の中で体を温めながら、さらに筋肉をほぐすこともできるため、血流改善効果が高まります。

とはいえ、「本格的な腹筋・背筋のトレーニングを何セットも行うのは難しい」「プールに頻繁に通えない」という患者さんも少なくありません。そのような方におすすめなのが「空気イス運動」です。

空気イス運動は、言葉のとおり、イスに座るときのような中腰の姿勢になって筋力を鍛える運動です。腹筋・背筋を鍛える一般的な運動は、床に寝転んだ姿勢から上体を起こすという大きな動きが必要です。一方、空気イス運動は基本的に立ったままの状態からお(しり)を後ろに引くように体を沈めることで、腰痛の人が鍛えるべき腹筋や背筋、腰と太ももを結ぶ(ちょう)(よう)(きん)などの胴から(でん)()にかけての主要な筋肉に加え、(だい)殿(でん)(きん)(だい)(たい)()(とう)(きん)、ハムストリングス、ふくらはぎといった臀部から()()にかけての主要な筋肉を鍛えることができます。

私たちの背骨は(つい)(こつ)が積み木のように重なり、体の軸となっています。背骨を支えているのが、腹筋や背筋、腸腰筋などのインナーマッスル(体の深層部にある筋肉)です。特に、上半身と下半身をつなぐ唯一のインナーマッスルである腸腰筋を鍛えることは大切です。背骨から腰にかけてのS字状の曲線を維持したり、太ももやひざを持ち上げたりする働きがスムーズになるため、姿勢の改善や腰部の安定につながるのです。

空気イス運動で胴回りや臀部、下肢の筋力が向上すると、姿勢や腰が安定することで痛みやしびれが和らぎます。また、筋肉を動かすことで足腰の血流が改善する効果も期待できます。

空気イス運動は、深呼吸をするペースで5~6回繰り返して行うのを一セットとします。鼻から深く息を吸い込みながらお尻を引いて体を沈め、口から息を吐きながら体を起こしていきます。動作中は息を止めないようにして、太ももの前や後ろの筋肉にしっかり力が入っていることを意識しながら、ゆっくりと行いましょう。

空気イス運動は、1日3セットを目安に毎日行いましょう。朝・昼・晩1セットずつ行うのが理想的ですが、難しければ好きなタイミングでかまいません。空気イス運動を行う際にくれぐれも注意していただきたいのが「転倒」と「ひざへの負担」です。転倒予防のために、イスに腰かけた姿勢から、机に手をついた状態で立ち座りの動作を繰り返しましょう。机に手をつかずにできる自信がある場合でも、転倒の危険を避けるため、初めのうちは机に手をかざしながら行ってください。また、負担がかかりすぎないように、ひざは90度以上曲げないで行いましょう。痛みや違和感が生じたら無理に行おうとせず、主治医や理学療法士に相談してください。

空気イス運動を行えるかどうかは、脊柱管狭窄症の重症度の1つの目安になります。足腰に痛みやしびれが生じていても、中腰の姿勢での筋トレに取り組める状態であれば、運動療法による効果が十分に期待できます。3ヵ月~半年ほど運動療法を取り入れた保存療法を継続して、手術を回避できている患者さんも少なくありません。

運動療法に取り組んでも痛みやしびれが改善しない患者さんは、血流改善薬を服用してもらいながら様子を見ます。それでも効果がない場合には手術が検討されますが、手術を受けた患者さんのリハビリテーションでも筋力の維持・強化や血流の改善は重要です。リハビリテーションの際、意識的に足首を動かすようにすると、手術後にふくらはぎの静脈にできやすい(けっ)(せん)の予防につながります。

脊柱管狭窄症の痛みやしびれの予防・改善には、足腰の筋肉を強化して腰部を安定させることと、血流を促進して神経に酸素や栄養を届けることがとても大切です。無理のない範囲で積極的に運動するよう心がけてください。