メモリークリニックお茶の水理事長 朝田 隆
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、私たちの生活は一変しました。特に、外出時のマスク着用が習慣化したことは、大きな変化の一つといえるでしょう。認知症研究の第一人者として知られる朝田隆先生は、今回このマスクに着目しました。
脳にある「顔細胞」が人の顔を認識するがコロナ禍ではマスクで鼻と口が覆われて困難
コロナ禍が続き、街中でマスクをしていない人を見ることが少なくなりました。マスクをしていると、目の部分しか見えなくなってしまいます。見知らぬ人がマスクを外したときに初めて見せた全体の顔が、予想とまったく違うという経験をしたことがある人も多いでしょう。
第3回でご紹介した「顔細胞」はご記憶にあるでしょうか。人混みの中でも特定の人を見分けることができるのは、脳の「側頭連合野」という領域の働きによるものです。側頭連合野の中には、人間の顔や顔に非常に近いものに反応する「顔細胞」と呼ばれる神経細胞があります。社会を形成する人間は生きていくうえで他人の顔を覚え、表情を読むことが不可欠です。顔細胞は、社会を生きる人間が進化の過程で手に入れたものと考えられます。
一般的に、顔細胞は「目・鼻・口」の順番で人の顔を覚えていくといわれています。しかし、コロナ禍で鼻と口がマスクで覆われて目の情報しかなくなると、顔全体を把握することはかなり難しくなるようです。
3人の患者
さて、今回ご紹介するのは、マスクを使った顔認識の問題です。イラストをご覧ください。3人のうち、田中さんは誰でしょうか。3人とも鼻や口、顔の輪郭などはマスクで隠されていてヒントになりません。回答のカギは、やはり目にあります。
目の特徴を表す言葉として、「ツリ目」「垂れ目」「ドングリ目」「キツネ目」など、多くのものがあります。ほかに一重や二重などのまぶたの形状や、虹彩や瞳孔の色なども有力なポイントになります。
さてこの問題、カラーコンタクトに興味がある人は簡単だったかもしれません。カラーコンタクトを選ぶ際は、黒目の大きさ、黒目と左右の白目の比率が重要になってきます。一般的に、日本人の平均だと「白目:黒目:白目」の比率は「1:1.5:1」で、瞳が美しく見える黄金比率はもう少し黒目が大きい「1:2:1」だといわれているようです。
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