帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科准教授 大山 良樹
寒い12月、街では首にマフラーを巻いている人をよく見かけます。首を寒風にさらすと、頸部にある交感神経に影響を及ぼして、全身が一気に冷えてカゼを引きやすくなります。マフラーは、寒風から「首」を守るために巻くのです。今回ご紹介するツボは、首の周辺にあってカゼ予防に効果があるとされる「大椎」「風門」の2つです。
カゼの引きはじめは、「大椎」付近の皮膚の温度が、その周囲の皮膚より低くなることが、サーモグラフィーを使った実験で証明されています。カゼの引きはじめに背中がゾクゾクするのは「やがてカゼを引く」という警告反応です。
「カゼを引いたかな?」と思ったら、シャワーを使って「大椎」のツボに温水をかける「ツボシャン(ツボにシャワー刺激を与えること)」を試してみてください。温泉にある打たせ湯と同じ要領で、「大椎」の皮膚温を上げてあげましょう。
そのほかの方法としては、入浴後にドライヤーでツボ周囲を温めたり、ツボ部分を中心にカイロを使って温めたりするのもいいでしょう。いずれの刺激も、皮膚の部分が軽く発赤(ピンク色になる)する程度に温めましょう。カイロを使う場合は、低温やけどを防ぐために、下着の上から貼るようにしましょう。
カゼ対策のもう1つのツボが「風門」です。風門は名前のごとく、「風邪が、カゼの門を開けて体に入ることでカゼを引いてしまう」と考えられています。インフルエンザなどのウイルスの病原体が直接、「風門」のツボに入って、カゼを発症させるわけではありませんが、ツボを温めて体の抵抗力を上げることで、カゼの予防につながります。
皮膚刺激は免疫力を高めるともいわれています。例えば、硬式用のテニスボールを使って、肩甲骨の内側周囲をコロコロと刺激するのもおすすめです。「大椎」「風門」を同時に刺激することは、相乗効果によってより有効なツボ刺激となるでしょう。
● 由来
【大椎】背骨で最も大きい第7頸椎の下に位置するツボのため「大椎」と呼ばれています
【風門】「門」は出入口の門戸という意味です。風邪の邪気(悪い気)が侵入する門戸であるので、「風門」と呼ばれています
● 効能
【大椎】発熱、感冒、頭痛、ぜんそく、肩こり、寝違い、アレルギー性鼻炎、皮膚発疹など
【風門】発熱、悪寒、頭痛、首のこり、嘔吐、めまい、腰背部痛など
● 押し方
爪の色が白っぽくなる程度が適度な刺激です。親指をゆっくり5~6回ほど回転させながら、心地いい圧で押しましょう